日本政策金融公庫のコロナ借換保証

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コロナ禍で中小企業や個人事業者の資金繰り危機をひとまず救ったのが「民間ゼロゼロ融資」と呼ばれる無担保、3年間実質無利子のコロナ対応融資でした。ただ、苦境から脱し切れていない企業が多い中、民間ゼロゼロ融資の多くが元本返済の開始時期を迎えつつあります。中小企業庁では「コロナ借換保証」を設け、主に民間ゼロゼロ融資の返済負担を軽減することによって中小企業の経営を支援します。

民間ゼロゼロ融資の元本返済、利払い期が間もなく集中

民間ゼロゼロ融資は2020年5月から翌年3月まで民間金融機関で申し込みを受け付けていました。対象は売上高がコロナ前より15%以上落ち込んでいるなどの一定の条件を満たす中小企業で、当初3年間は実質無利子で融資を受けられ、信用保証料も原則無料でした。信用保証料とは、金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が債務保証をする信用保証制度の利用料です。民間ゼロゼロ融資は上限額が6000万円、保証期間が最長10年。元本返済をしなくて済む据置期間を最長5年まで設定できるのも特徴でした。

コロナ禍で倒産が急増すると、失業者の再就職が難しく、不況がスパイラル的に深刻化する恐れがありました。民間ゼロゼロ融資の保証承諾実績は計137万件の総額23兆円に上り、公庫融資や持続化給付金などとともに中小企業の資金繰りを支えました。その結果、東京商工リサーチの調べによると、2021年の全国の倒産件数は6030件にとどまり、コロナ禍にもかかわらず57年ぶりの低水準となりました。

しかし、多くの中小企業にとってコロナ危機はまだ収束していません。据置期間のない融資や短い融資では返済がすでに始まっていますが、据置期間3年程度のものは2023年7月から2024年4月にかけて集中的に返済開始時期が訪れます。2022年にはコロナ関連倒産が前年の1.3倍に増えており、据置期間と無利子期間の終了にともなう元本返済、利払いの開始が重なると、倒産がさらに増える恐れがあります。

借り換えで据置延長や年間返済額の軽減も

そこで、主に民間ゼロゼロ融資を新たな融資に借り換えることによって返済負担の軽減を図るため、中小企業庁は、国が保証料の一部を補助するコロナ借換保証を創設しました。最近1か月の売上高が前年同月より5%以上減少した事業者や、売上高がコロナ禍前より20%以上減少している事業者などが対象で、最近の原材料費、光熱費の高騰による経営の圧迫も配慮して売上高総利益(粗利益)率や営業利益率が5%以上低下した事業者も対象になっています。受付は1月から始まっています。

この制度を利用すると、最長10年の融資に借り換えられ、そのうち最長5年を据置期間に設定できます。つまり、民間ゼロゼロ融資の融資期間や据置期間を延長するのとほぼ同じ効果が生まれることになります。元本の返済期間を長くすれば、年間返済額を抑えることもできます。

ただし、借り換え後の融資には民間ゼロゼロ融資と違って無利子期間がありません。金利は金融機関によってまちまちですが、自治体の制度融資を利用する場合は、自治体が上限金利を定めていることがあり、概ね1%から1%台半ばが多くなっています。信用保証料については、保証料率を0.85%から0.2%まで引き下げるなどの補助を国が措置することで事業者の負担を軽減しています。国の補助に加え、独自の補助を上乗せしてさらに低率、あるいは無料とする自治体もあります。

経営行動計画書の策定が条件に

コロナ対策としての金融支援措置が長期化すると、もともと生産性の低い企業の延命によって新陳代謝が阻害され、経済の停滞や活力の低下を招きかねないとの指摘もあります。

コロナ借換保証による融資には、こうした副作用を避けながら、中小企業に経営改善を促すという目的もあります。コロナ禍で苦しむ企業は資金繰りのためだけでなく、事業の再構築などの前向きな投資のための資金調達にもこの制度を使うことができます。新たな資金需要にも応えるため、融資枠は民間ゼロゼロ融資の6000万円から4000万円増やし、1億円に設定しています。

制度を利用する際には、事業計画(経営行動計画書)の策定が必要となります。その中には、自社の現状認識に関する分析や長期的な将来目標、その基盤を作るための具体的な行動プラン、収支・返済計画などを盛り込むことになっています。

一方、融資する金融機関にも、計画の進捗状況をチェックしながら助言や取引先の紹介などを行う「継続的な伴走支援」を求めています。金融機関にとって、伴走支援が中小企業の経営を支援する人材を育成する場となり、それが地域経済の活性化につながることがねらいです。

前向き投資への利用も可能

本年1月の受け付け開始から5月末までに全国の信用保証協会が応諾したコロナ借換保証は約4万件・1兆円に上ります。中小企業庁の集計では、金融機関の中小企業向け融資残高はコロナ前の2019年第4四半期からの2年間で1.1倍程度となっています。コロナ禍前への回復を待つだけでは、膨らんだ負債で経営が立ち行かなくなる恐れのある企業が増えかねません。中小企業庁はコロナ借換保証などを通じて、自社の特徴を生かす工夫を凝らしながら生産性や収益力を高めようとする企業の取り組みを支援していきます。

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