NO12【信用保証協会 その1】

2024/11/24 13:51:47 - By zaimclinic
資金繰り改善 NO12
資金繰り改善 NO12

【信用保証協会 その1】

中小企業の資金調達は「通例に従う」だけでいいのか?信用保証協会付き融資のメリットとリスクを再考する
中小企業の資金調達において、信用保証協会付き融資は非常に一般的な手段です。しかし、経営者の皆様は「通例だから」「よくわからないけど銀行に勧められたから」という理由だけで、この方法を選んでいませんか?

このような判断で信用保証協会付き融資に依存すると、予期せぬリスクを抱えることになりかねません。本記事では、信用保証協会付き融資の仕組み、メリットとデメリット、そして通例に従うだけではなく自社に最適な資金調達方法を選ぶためのポイントを解説します。中小企業の経営者の皆様にとって、この記事が資金調達方法を見直すきっかけになれば幸いです。


●信用保証協会付き融資とは?

信用保証協会付き融資は、銀行が直接企業に資金を貸し出す際に、信用保証協会がその融資を保証する仕組みです。この保証により、企業が返済困難に陥った場合でも、保証協会が借入金の80%から100%を銀行に肩代わりして返済します。そのため、銀行にとってはリスクが大幅に軽減されるため、中小企業に対しても融資が行いやすくなるわけです。

ただし、この保証を受けるには、企業側が信用保証協会に「保証料」を支払う必要があります。銀行が貸し出すお金のリスクは保証協会が負うため、銀行にとってのリスクはほぼなく、実際には銀行が「貸してやっている」といった優位な立場をとることには疑問が残ります。


(信用保証協会付き融資のメリット)

信用保証協会付き融資は、特に資金調達が難しい中小企業にとっては有力な手段ですが、どのようなメリットがあるのでしょうか?

1. 資金調達が容易になる

保証協会の保証を受けることで、銀行が融資を出しやすくなるため、信用力が不十分な企業でも資金調達がしやすくなります。これにより、事業の成長や運転資金の補充ができ、経営を安定させる手助けとなります。

2. 資金繰りの改善

返済期限を長く設定できるケースが多く、月々の返済負担が軽減されるため、資金繰りを改善しやすくなります。また、一定のキャッシュフローが維持されることで、事業計画の実行や拡大を進めやすくなります。

3. 安定した事業運営が可能

保証協会のサポートを得ることで、事業運営に必要な資金を確保しやすくなります。これにより、急な設備投資や事業拡大に必要な資金を確保し、経営の安定化が図れます。


(信用保証協会付き融資のリスクとデメリット)

一方、保証協会付き融資には以下のようなデメリットやリスクもあります。「通例だから」とだけで選んでいると、意外な落とし穴に気づかないこともあります。

1. 保証料のコスト負担

保証協会の保証を受けるには、保証料の支払いが必要です。この保証料は融資額の1〜2%程度で、返済年数が長くなるほどコストが増加します。企業にとっては、この保証料が利益を圧迫する負担となる可能性があります。

2. 信用力以上の借入リスク

保証がつくことで、通常よりも大きな金額の融資が可能になる場合がありますが、これは信用力以上の負債を抱えるリスクにもなります。万が一、業績悪化などで返済が難しくなれば、最終的には信用保証協会が肩代わりをしてくれるとしても、企業の財務状況に大きな負担をかけ、経営を圧迫することになりかねません。

3. 自己責任の欠如

保証付き融資は「保証があるから返済できなくても安心」といった心理が生まれるリスクもあります。安易に借り入れを行うと、資金計画が甘くなり、本来の資金計画がうまく機能しなくなる可能性もあります。

4. 保証協会の審査依存
保証協会の保証を受けるには審査が必要であり、協会の基準を満たさなければ保証を受けられません。これにより、資金調達の柔軟性が制限される場合もあり、企業は他の選択肢を持っておくことが重要です。


(「通例に従う」だけでは危険──保証付き融資に依存しすぎるリスク)

保証付き融資は便利な制度ではありますが、安易に「通例だから」と利用することは危険です。経営者として知っておきたいリスクには以下のようなものがあります。

1. 保証料の無駄な支出

保証付き融資が必要でなければ、保証料というコストを払う必要はありません。企業が信用力を高めて無保証の融資が受けられるようになれば、保証料の支出をカットすることで、経営資源を有効活用できます。

2. 資金の利用効率が低下するリスク
保証付き融資を通じて、通常より多額の資金調達が可能になる場合がありますが、その資金の使途が曖昧なまま借り入れると、必要のない負債が生じ、キャッシュフローが不安定化するリスクが高まります。資金の利用目的や返済計画が明確でない場合は、返済不能に陥る可能性も考えられるでしょう。

3. 信用力が育たない

保証付き融資に依存しすぎると、企業の信用力が育たず、結果的に自力での資金調達が難しくなる可能性があります。無保証での融資を受けられるようにするためには、企業が日々の事業で安定したキャッシュフローを確保し、健全な財務体質を築く努力が必要です。


(保証付き融資以外の選択肢を検討しよう)

保証協会付き融資が自社にとって最適かどうかを判断するには、他の資金調達方法についても理解しておくことが重要です。以下に、いくつかの選択肢を紹介します。

1. 無保証融資の活用

企業の財務体質や信用力が改善されれば、無保証での融資も可能になります。無保証融資であれば保証料を支払う必要がなく、経営資源を有効に活用することが可能です。日頃から財務の健全化を図ることで、無保証融資の道を開く努力をしていくことが大切です。

2. 資本性劣後ローン

資本性劣後ローンは、一定期間返済を猶予することで企業の財務基盤を安定化させる手段です。資本として扱われるため、自己資本比率を向上させる効果があり、資金調達の選択肢として検討する価値があります。

3. ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資

特に成長段階にある企業であれば、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を受けることで、負債としての返済義務なく資金を得ることができます。将来的な成長を見据えた資金調達手段として適しています。

4. クラウドファンディングや投資型ファンディング

新規プロジェクトや新商品開発のためには、クラウドファンディングを活用することで、負債を負わずに資金調達を行う方法もあります。これにより、資金調達と同時に市場からの支持も得られるため、マーケティング効果も期待できます。


(まとめ:自社に最適な資金調達方法を見極める)

保証協会付き融資は多くの中小企業が利用する手段ですが、「通例だから」と理由だけで依存するのは避けるべきです。企業が自身の経営状況を踏まえ、適切な資金調達方法を選ぶことが重要です。さまざまな資金調達手段を比較し、自社にとって最適な方法を見極めることで、将来の成長と財務の安定化を実現することが可能です。

もし、資金調達方法について不安や疑問がある場合は、ぜひ専門家に相談し、自社にとって最適な選択肢を確認してみてください。資金調達の戦略を見直すことで、企業の成長と経営の安定化をサポートするお手伝いができればと思います。