NO11【債務の資本化(DES:Debt Equity Swap)】

2024/11/23 15:56:30 - By zaimclinic
資金繰り改善 NO11
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債務の資本化(DES:Debt Equity Swap)】


◇ 債務の資本化(DES)で経営を立て直す

中小企業経営者に知ってほしいメリットとリスク
事業を長年続けていると、予期せぬ経済変動や業績悪化、資金繰りの悪化に直面することは少なくありません。そのような状況において「債務の資本化(DES:Debt Equity Swap)」という方法をご存じでしょうか?借入金(債務)を株式に転換することで、財務を安定させることができるため、経営を再建し、事業を安定化させるために活用される手法の一つです。

この記事では、DESがどのように企業経営に役立つか、そのメリットやリスクについて解説します。資金繰りの改善や経営再建に悩む中小企業の経営者の方に、ぜひ知っていただきたい内容です。


(債務の資本化(DES)とは?)

債務の資本化(DES)とは、企業が抱える借入金を債権者(主に銀行や投資家)との合意に基づき、株式に転換する手法です。この手法により、借入金が株式に置き換わり、企業のバランスシートにおいて債務が減少し、資本が増加します。これにより、債務返済のプレッシャーが軽減し、資金繰りが改善するため、経営再建を目指す企業にとって有効な手段となることがあります。

例えば、金融機関からの借入金が返済困難な状態にある場合、金融機関と協議して貸付債権を株式に転換することが考えられます。こうすることで、企業の返済負担が減り、経営を継続しながら再建に向けた基盤を整えることが可能です。


(DESのメリット:なぜ資金繰り改善に効果的なのか)

DESには、以下のようなメリットがあり、特に資金繰りが厳しい中小企業にとって魅力的な手段となりえます。

1. 返済負担の軽減
DESにより借入金が資本に置き換わることで、返済義務がなくなります。利息の支払いも不要になり、キャッシュフローが改善します。特に業績が悪化している時期においては、資金流出を防ぎ、経営の安定化に繋がります。

2. 財務体質の改善
債務が減少し、自己資本比率が向上するため、財務の健全性が高まります。これにより、取引先や金融機関からの信用度が上がり、将来的に新たな資金調達をしやすくなる可能性もあります。中小企業にとって、強固な財務体質は安定した経営を支える重要な要素です。

3. 事業再生の可能性が広がる
DESを通じて負債を減らすことで、事業再生のチャンスが生まれます。債権者が企業再生のために支援してくれるケースもあり、企業が本業に専念できる環境が整いやすくなります。これにより、経営再建がスムーズに進む可能性が広がります。

4. 株主構成の多様化による支援
債権者が株主となることで、新たな出資者として経営に積極的に関与してくれる場合もあります。特に銀行や金融機関が株主として入ることで、経営の安定化に向けた支援を期待できるケースもあるでしょう。金融機関のノウハウやネットワークの活用による支援が、企業の成長をサポートすることがあります。


(DESのリスクとデメリット)

DESにはメリットがある一方で、実施にはリスクも伴います。経営者の方々は、以下のデメリットやリスクについても理解しておくことが重要です。

1. 株式の希薄化
既存の株主にとっては、DESによって発行される新しい株式が増えるため、持株比率が低下する(株式の希薄化)というデメリットがあります。経営権の維持を重要視する場合には、この点に注意が必要です。

2. 経営方針への影響
債権者が株主となることで、経営に関与する可能性があります。金融機関や投資家が株主となった場合、企業の戦略に対して助言や提案がなされることもあり、経営方針が従来の方向性と変わる可能性があります。これにより、経営者の意思決定に制約が生じることも考えられます。

3. 企業価値の低下リスク
企業の債務を株式に転換することは、財務的に困難な状況にあると市場に認識される場合があるため、既存株主の株価が下がる可能性もあります。特に上場企業では、株式市場の評価が企業の価値を左右するため、このリスクが大きくなることがあります。

4. 再建計画の厳格化
DESを行う際には、金融機関や債権者との再建計画に関する協議が求められます。これは再建計画の厳格な遂行を要求されるケースも多く、企業の再建には時間や労力がかかることもあります。中小企業がこうした計画を実行するには、経営陣の努力が不可欠です。


(DESが適用される場面)

債務の資本化は、特に以下のような経営状況にある企業において有効です。

・債務超過で経営が厳しい場合
資金繰りが限界に近く、借入金返済が困難で、かつ事業の見込みがある場合には、DESが経営再建の助けとなります。特に再建の可能性がある企業であれば、金融機関や投資家も協力しやすくなります。

・経営は安定しているが、負債が過多な場合
営業は安定しているが、負債が多く、返済が事業成長の妨げになっている場合にもDESが効果的です。キャッシュフローの負担が軽減されることで、新たな投資に資金を回せるようになり、成長機会を取り戻す可能性があります。

・事業継続のための支援が必要な場合
資金繰りの改善が難しく、事業の継続が危ぶまれる場合、金融機関や債権者と協力してDESを活用することで、事業再建の道を開くことができます。


(DESの進め方と専門家の支援)

DESの実施には、金融機関や投資家との協議が不可欠です。また、債務の資本化によってどのような影響が経営に及ぶかをしっかりと把握し、将来の見通しを立てる必要があります。そのためには、専門家の支援が非常に重要です。


(DESを進める際のポイント)

債権者との合意形成:DESには債権者の協力が必須です。適切な条件で合意を得るためには、交渉力が求められます。
企業価値の評価:企業の価値を適正に評価し、DESが企業にとって最適な手段であるかを確認する必要があります。
計画の見直しと将来予測:資金繰り計画やキャッシュフローを綿密に見直し、再建計画を確立することが重要です。


(専門家に相談するメリット)

DESを成功させるためには、法務、財務、経営に関する知識と経験が求められます。専門家に相談することで、以下のような支援を得ることが可能です。

・適切な資本化スキームの提案:企業の状況に合わせた最適なDESのスキームを設計。
・債権者や金融機関との交渉支援:DESの合意形成をスムーズに進めるための交渉サポート。
・経営計画の策定とフォローアップ:DES後の経営安定化をサポートし、将来に向けた成長を支援。


(最後に)

債務の資本化(DES)は、経営の安定化と事業再建のための一つの選択肢ですが、実施にはリスクも伴います。経営者が独自に行うには難しい判断や手続きが多いため、信頼できる専門家と連携し、自社の状況に合った最適な解決策を見つけることが重要です。もし、債務の負担で資金繰りが厳しくなり、再建の方法を検討している場合は、まずはお気軽にご相談ください。