資金繰り改善 NO14
【信用保証協会 その3】
●保証料を負担するのは本当に正しい選択か?中小企業経営者が知っておくべき「保証付き融資」の真実と最適な資金調達方法
中小企業の経営者にとって、資金調達は事業を維持・成長させるための重要な手段です。そのなかで、信用保証協会の保証付き融資は、多くの企業が利用する選択肢となっています。銀行からの融資に信用保証協会が保証を提供することで、中小企業が資金調達を容易にする仕組みです。しかし、「保証料の負担がなぜ企業側に課されるのか?」と疑問を感じる経営者も多いのではないでしょうか。
確かに、保証料の負担は企業にとって大きなコストです。それなのに、銀行がリスクを減らしているにもかかわらず、保証料を借り手側が支払うことが一般的な慣例となっています。この記事では、保証料が企業側に課される理由とその意味、保証付き融資が最適かどうかを見極めるための視点を解説します。資金調達の方法に迷いや疑問がある経営者の皆さんが、自社にとって最良の方法を選ぶための一助となれば幸いです。
(信用保証協会の役割と「保証付き融資」の仕組み)
まず、信用保証協会と保証付き融資の仕組みを理解しておきましょう。信用保証協会は、中小企業が円滑に資金を調達できるようにサポートする公的機関です。銀行から直接融資を受けにくい中小企業に対して、保証協会が「信用保証」を提供することで、企業が融資を受けやすくなります。
保証協会が「保証」を提供することによって、銀行の貸し倒れリスクが大幅に軽減されます。企業が返済不能になった場合、保証協会が借入額の80〜100%を銀行に返済するため、銀行は安心して融資を行うことができるのです。その結果、信用力が低い中小企業でも融資が成立しやすくなります。
(なぜ保証料は企業側が支払うのか?)
「保証料は、銀行が支払うべきでは?」と感じる経営者が多いのは当然のことです。銀行のリスクを軽減するための保証であれば、銀行がその費用を負担するのが自然に思えます。しかし、実際には保証料は借り手の企業が支払うことが通例です。その理由を理解するために、いくつかの観点から説明します。
1. 保証料は「借り手の信用力を補完するためのコスト」
保証料は、「企業が十分な信用力を持っていないことを補うためのコスト」として位置づけられています。信用力が十分でない企業は、本来であれば銀行の融資審査を通過しにくいのですが、保証料を支払って保証協会のサポートを得ることで、リスクを減らし融資を受けやすくなります。保証料は、企業側が「不足する信用力を金銭で補完するためのコスト」として負担するのが一般的です。
2. 保証協会の制度は「中小企業支援」のため
信用保証協会は、銀行のために存在しているわけではなく、あくまで中小企業の支援を目的に設立された公的機関です。中小企業が必要な資金を調達しやすくするための仕組みであり、保証料もそのための「中小企業支援のコスト」という位置づけになっています。このため、保証料は融資を受ける企業が負担するのが適切とされています。
3. 銀行と保証協会の役割分担を明確にするため
銀行は「資金を貸し出す側」として融資に対する利息収入を得る立場であり、保証協会は「信用を補完する側」として借り手のリスクを肩代わりする役割を担っています。保証料を企業が負担することで、銀行と保証協会の役割が明確に分かれるため、リスク管理が整理されます。
4. 保証料は「信用補完のためのコスト」として位置づけられている
保証付き融資の保証料は、信用力を補うための費用とされています。例えば、信用力の高い企業は保証なしで銀行から融資を受けられることが多いため、保証料を支払う必要はありません。しかし、中小企業は信用補完のために保証付き融資を利用することが多く、これを借り手が負担することで、結果的に資金調達の機会が広がります。
5. 金利と保証料のバランス
保証付き融資は、保証協会がリスクを軽減しているため、銀行は通常よりも低金利で融資を提供しやすくなります。保証料を支払うとしても、保証なし融資に比べて金利が低いことが多いため、企業の返済負担が軽減されるメリットもあります。
(保証料の負担が中小企業に与えるメリットとリスク)
保証料の負担には、企業側にとってのメリットもありますが、慎重に検討すべきリスクもあります。
(保証料を負担するメリット)
・融資が受けやすくなる:保証付き融資は、銀行にとってリスクが軽減されるため、企業が融資を受けやすくなります。これにより、信用力が低い企業でも事業資金を確保でき、成長のチャンスが広がります。
・低金利での融資が可能:保証付き融資は通常の融資に比べて金利が低く設定されることが一般的です。保証料が発生しても、低金利で融資が受けられるため、トータルの返済負担が軽減されることが多いです。
・事業の信頼性が向上する:保証協会の保証を受けることで、企業の信用力が対外的に証明されます。これにより、取引先や仕入先からの信頼度も高まるため、事業を円滑に進める上でのメリットも期待できます。
(保証料負担のリスク)
・コストの増加:保証料は融資額の1〜2%程度ですが、融資額が多い場合はその分コストも増大します。これにより、事業の利益が保証料の負担に見合わない場合、資金繰りが圧迫されるリスクがあります。
・無保証融資ができないことによる信用力成長の阻害:保証付き融資に依存しすぎると、企業の信用力が成長する機会を失いかねません。無保証での融資ができるようになるためには、企業の信用力を向上させる努力も必要です。
(保証料負担の見直しが必要と感じたら検討すべき選択肢)
もし保証料の負担が重いと感じる場合や、自社にとって他の資金調達方法が適切かもしれないと考える場合、以下のような選択肢も検討する価値があります。
1. 無保証融資の検討
保証協会に頼らず、無保証のプロパー融資を受けられるか検討するのも一つの方法です。日頃から財務の健全化を図り、銀行との信頼関係を築くことで、無保証融資の可能性が広がります。無保証で融資を受けられる場合、保証料が不要になり、資金調達コストが軽減されます。
2. 他の資金調達手段を検討する
保証付き融資以外にも、資本性劣後ローンやベンチャーキャピタルからの出資、クラウドファンディングなど、負債を負わずに資金調達できる方法もあります。特に成長性が期待できるプロジェクトや新事業の立ち上げには、他の選択肢も含めて検討することが効果的です。
3. 銀行と保証料の負担について交渉する
銀行と交渉することで、保証料負担の一部を銀行に依頼することができる場合もあります。銀行との関係が良好であれば、返済計画や融資条件の見直しを通じて、負担軽減が可能なケースもあります。銀行と率直に話し合い、負担を軽減する方法を模索してみましょう。
4. 専門家に相談する
資金調達の選択肢やコストの見直しについて不安がある場合、専門の財務コンサルタントに相談することが効果的です。コンサルタントは、企業の財務状況や今後の成長計画に応じた最適な資金調達方法を提案し、資金繰りの安定化や経営効率化のアドバイスを提供してくれます。
(まとめ:保証料負担の悩みは、今こそ専門家に相談を)
信用保証協会の保証料が借り手である企業側に課される理由について解説しましたが、保証料が負担となる場合や他の資金調達方法も検討したい場合、専門家のサポートを受けることが一つの解決策です。財務コンサルタントと一緒に、自社に最適な資金調達手段を見つけ、長期的な成長と安定経営のための計画を立てることで、企業はより健全な財務基盤を築くことができるでしょう。
保証料の負担が気になる方や、自社の資金調達について疑問を感じている方は、ぜひ一度、専門家にご相談ください。最適な資金調達方法を見つけ、企業の成長を支える基盤を強化するための第一歩を踏み出しましょう。