NO159【資金繰りが苦しい時の資金調達 その5】

2025/03/12 9:31:08 - By zaimclinic
資金繰り改善 NO3
資金繰り改善 NO159

【資金繰りが苦しい時の資金調達 その5】

 

借入れすぎは危険?銀行融資とキャッシュフローのバランス術


はじめに

企業が成長し、新たな事業展開や設備投資を行う際、銀行融資は重要な資金調達手段となります。適切に活用すれば、事業の拡大や経営の安定に大きく寄与するでしょう。しかし、借入れすぎると返済負担が増え、キャッシュフローが圧迫されるリスクも伴います。

特に、売上の変動が大きい企業や利益率の低い事業の場合、過剰な借入れが経営を圧迫し、最悪の場合、資金繰りの悪化による倒産を招くこともあります。そのため、「いくら借りられるか」ではなく、「いくら返せるのか」を意識した資金調達が求められます。

本記事では、銀行融資のメリットとリスクを整理し、キャッシュフローを守るための戦略について解説します。資金繰りのバランスを適切に管理し、企業の成長を支えるためのポイントを押さえていきましょう。




銀行融資のメリットとリスク


1. 銀行融資のメリット
銀行融資は、多くの企業にとって最も一般的な資金調達手段のひとつです。その主な利点は以下の通りです。

  • 設備投資や運転資金の確保
    事業拡大や新規プロジェクトのための設備投資に必要な資金を確保できます。特に、利益が出るまでに時間がかかるビジネスでは、銀行融資によって資金繰りを安定させることが可能です。
  • 信用力の向上
    銀行からの融資を受けることで、金融機関との信頼関係が築かれ、将来的により有利な条件での融資を受けやすくなります。また、銀行融資を利用することで、企業の信用力が向上し、取引先からの評価も高まる可能性があります。
  • 資金調達コストが比較的低い
    ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資と比較して、銀行融資は資金調達コストが低く、経営権を維持できるというメリットがあります。


2. 借入れすぎのリスク
一方で、銀行融資にはリスクも存在します。特に、借入れすぎることで以下のような問題が発生する可能性があります。

  • 利息負担の増大
    借入金が増えるほど、利息負担も重くなります。金利が低い環境でも、過剰な借入れが利益を圧迫し、事業の自由度を制限する要因となるでしょう。
  • 返済義務による資金繰りの悪化
    毎月の元本返済が固定費として発生するため、売上が減少した際に資金繰りが厳しくなるリスクがあります。特に、景気の変動が激しい業界では、借入れすぎによる返済負担が経営の足かせになることがあります。
  • 財務の柔軟性が低下する
    過剰な借入れによって自己資本比率が低下すると、新たな投資機会に対応できなくなる可能性があります。また、金融機関との交渉力が弱まり、追加融資の条件が厳しくなることも考えられます。


3. 借入れの適正水準を判断する指標
銀行融資を活用する際には、以下のような指標をチェックすることで、適正な借入額を判断できます。

  • 自己資本比率()
    企業の安定性を測る指標の一つで、「自己資本総資本」で算出されます。一般的に、自己資本比率が高いほど財務の健全性が高いとされます。
  • DSCR(:債務返済余裕率)
    「営業キャッシュフロー借入金元利支払額」で計算される指標で、倍以上が望ましいとされています。が低いと、借入金の返済能力が不足していると判断される可能性があります。
  • インタレストカバレッジレシオ()
    「営業利益支払利息」で計算され、企業の利息支払い能力を示します。一般的に、この数値が倍以上あることが望ましいとされています。

 

キャッシュフローを守るための資金調達戦略

銀行融資を活用する際に重要なのは、「資金を確保すること」だけではなく、「適切に管理し、企業の成長を支えること」です。そのためには、キャッシュフローを健全に保ちつつ、無理のない資金調達を行う必要があります。ここでは、キャッシュフローを守るための具体的な資金調達戦略を解説します。




1. 無理のない返済計画を立てる

借入金の返済負担を最小限に抑えるためには、事前にしっかりとした返済計画を立てることが重要です。以下の点を考慮しながら、適正な返済スケジュールを組みましょう。

  • 利益とキャッシュフローを基準に借入額を設定
    「借りられる額」ではなく「返済可能な額」を基準にすることがポイントです。利益率が低い場合や、回収期間が長いビジネスでは、慎重に借入額を決定する必要があります。
  • リスクヘッジとして返済猶予期間を活用
    設備投資など大きな支出を伴う場合、返済が始まる前に一定の猶予期間(据置期間)を設けることができる場合があります。銀行と交渉し、事業が安定するまでの期間を確保しましょう。
  • 長期借入と短期借入のバランスを考える
    設備投資など長期間にわたる資金用途には長期借入を、運転資金の補填には短期借入を活用するなど、資金の性質に応じた借入れ方を工夫しましょう。


2. キャッシュフロー管理の基本を押さえる

銀行融資を適切に活用するためには、日々のキャッシュフロー管理が不可欠です。資金の流れを把握し、無駄な支出を削減することで、健全な財務体質を維持できます。

  • 入金と出金のバランスを管理
    売上の入金サイクルと支払のタイミングを調整することで、資金繰りを安定させることができます。例えば、売掛金の回収を早めたり、仕入れ先との支払い条件を交渉したりすることで、資金の流れを改善できます。
  • 予算管理を徹底する
    毎月の固定費や変動費を明確にし、無駄なコストを削減することで、余裕資金を確保できます。また、売上が一時的に落ち込んだ場合でも、固定費を抑えることで資金繰りの悪化を防ぐことができます。
  • 緊急時の資金を確保する
    予期せぬトラブルや経済環境の変化に備え、一定の運転資金を確保しておくことが重要です。例えば、売上のか月分の運転資金を手元に残しておくことで、急な資金不足に対応できます。


3. 銀行融資以外の資金調達方法を活用する

銀行融資は便利な資金調達手段ですが、すべての資金ニーズを融資だけで賄うのはリスクが高くなります。他の資金調達方法と組み合わせることで、財務の安定性を高めることができます。

  • リースを活用する
    設備投資の負担を軽減するために、リースを活用する方法があります。リースを利用すれば、一度に大きな資金を必要とせず、月々のコストとして分割払いが可能になります。
  • ファクタリングを利用する
    売掛金の回収を早める方法として、ファクタリング(売掛債権の買取)があります。資金繰りが厳しいときに、売掛金を早期に現金化することで、キャッシュフローを改善できます。
  • 補助金や助成金を活用する
    各種の補助金や助成金を活用することで、資金負担を軽減できます。特に、中小企業向けの政府支援制度を利用することで、返済不要の資金を確保することが可能です。

 

銀行融資とキャッシュフローの最適なバランスを見つけるには?

銀行融資は企業の成長を支える重要な手段ですが、借入れすぎるとキャッシュフローを圧迫し、経営リスクが高まります。では、どのようにすれば、銀行融資とキャッシュフローの最適なバランスを取ることができるのでしょうか?ここでは、具体的なポイントを解説します。




1. 「借りられる額」ではなく「返せる額」を基準にする

企業が銀行融資を受ける際、金融機関は与信審査を行い、借入可能額を提示します。しかし、銀行が提示する額をそのまま借りてしまうのは危険です。重要なのは、「いくら借りられるか」ではなく、「いくら返済できるか」を基準に判断することです。


適正な借入額を判断するためのポイント

  • 返済比率を確認する
    売上や利益に対して借入金の返済額が適正な範囲内に収まっているかを確認しましょう。一般的に、年間返済額が営業利益の~%を超えると、キャッシュフローの圧迫リスクが高まります。
  • 資金用途を明確にする
    借入金が本当に必要な投資なのかを見極めることが大切です。収益を生まない支出に対して借入れをすると、返済負担だけが増えてしまいます。



2. 利益率や事業成長率に応じた適正な借入額の見極め方

企業の利益率や成長率に応じて、適正な借入額を決めることも重要です。

  • 利益率が低い事業は慎重に借入れを行う
    例えば、利益率が%の事業であれば、万円の借入れを返済するためには億円の売上が必要になります。一方、利益率%の事業なら、万円の売上で済みます。このように、利益率が低い事業ほど、慎重な借入れが求められます。
  • 事業成長率が高いなら、戦略的な借入れも有効
    一方で、成長が見込める事業であれば、適切な借入れによって投資を加速させることが可能です。ただし、成長シナリオが現実的であるかどうかを慎重に見極める必要があります。



3. 事業計画と資金繰りの定期的な見直し

銀行融資とキャッシュフローのバランスを維持するためには、定期的な見直しが不可欠です。

  • 資金繰り表を作成し、現金の流れを管理する
    毎月の収支を把握し、キャッシュフローがどのように推移しているかを確認しましょう。資金繰り表を作成することで、過剰な借入れや資金不足のリスクを事前に察知できます。
  • 売上・利益の変動をシミュレーションする
    売上が減少した場合でも返済が続けられるかどうかをシミュレーションしておくことが大切です。特に、景気変動の影響を受けやすい業種では、複数のシナリオを想定しておきましょう。



4. 財務の専門家に相談するメリット

銀行融資の活用やキャッシュフローの管理は、専門的な知識が求められる分野です。自社だけで判断するのが難しい場合は、財務の専門家に相談するのも有効な方法です。

  • 銀行交渉を有利に進めるためのアドバイスを受けられる
    金融機関と融資の条件交渉を行う際、専門家の意見を取り入れることで、より有利な条件を引き出せる可能性があります。
  • 経営状況を客観的に分析できる
    自社の財務状況を第三者の視点で分析してもらうことで、経営の改善点や資金繰りのリスクを把握できます。
  • 資金調達の選択肢を広げられる
    補助金や助成金の活用、投資家からの資金調達など、銀行融資以外の選択肢を検討する際にも、専門家のアドバイスが役立ちます。



まとめ

銀行融資は企業の成長を支える重要な資金調達手段ですが、借入れすぎるとキャッシュフローが圧迫され、経営リスクが高まります。

適切なバランスを取るためには、以下のポイントを意識することが大切です。

「借りられる額」ではなく「返せる額」を基準にする
利益率や事業成長率を考慮し、無理のない借入れを行う
資金繰りを定期的に見直し、現金の流れを管理する
財務の専門家に相談し、最適な資金調達戦略を立てる

企業の経営環境は日々変化します。銀行融資とキャッシュフローのバランスを適切に管理し、持続的な成長を目指しましょう。

資金調達や財務管理についてお悩みの方は、ぜひ当社までご相談ください。最適な資金戦略をサポートいたします。