
赤字でも資金繰りを安定させるためのつの工夫
企業が赤字に陥ると、資金繰りが厳しくなり、経営の存続自体が危ぶまれることがあります。しかし、赤字であっても適切な対策を講じることで、資金繰りを安定させ、事業の再建を目指すことは可能です。本記事では、赤字企業が資金繰りを安定させるための具体的なつの工夫を詳しく解説します。
(1)売掛金の早期回収と支払いサイトの調整
企業の資金繰りが悪化する主な原因は「入金と支払いのタイミングのズレ」です。売上が計上されていても、売掛金の回収が遅れたり、支払期限が先に来てしまったりすると、手元の資金が不足します。このズレを最小限にすることで、資金繰りを改善できます。
売掛金の早期回収
① 取引先との交渉
- 売掛金の支払いサイトを短縮できるよう取引先と交渉する。<br> 例:月末締め翌月末払い(日サイト)月末締め翌月日払い(日サイト)
- 早期支払いに応じる顧客に対して、少額の割引(例:〜の値引き)を提供することで、入金を早める。
② ファクタリングの活用
- 売掛金をファクタリング会社に売却し、即時現金化する。
- 2社間ファクタリング(売掛先に通知せず利用)または社間ファクタリング(売掛先が了承する形式)のどちらかを選択。
- 手数料が〜程度かかるため、資金調達コストを考慮する。
支払いサイトの延長
① 仕入れ先との交渉
- 支払い条件を「月末締め翌月末払い(日サイト)」から「月末締め翌々月末払い(日サイト)」に変更できるよう交渉。
- 仕入れ先に対し、「継続的な取引の確約」や「発注量の増加」を条件に、支払い猶予を依頼。
② クレジットカードの活用
- 経費や仕入れの一部をクレジットカードで支払い、締め日と支払日のズレを利用して資金繰りの余裕を確保。
- 例:クレジットカードの利用で実質〜日程度の支払い猶予を得る。
(2)不要な固定費の削減
赤字企業が資金繰りを改善するために、最も即効性のある施策の一つが固定費の削減です。固定費は、売上に関係なく毎月発生するため、これを削減することで赤字を減らし、資金繰りを安定させることができます。
本章では、削減すべき主な固定費と、それぞれの削減方法を具体的に解説します。
1.オフィス・設備コストの見直し
① オフィス賃料の削減
オフィスは本当に必要か?
- 売上や従業員数に見合わない広すぎるオフィスを借りていないか?
- 在宅勤務やシェアオフィスを活用し、オフィススペースを縮小できないか?
具体的な対策
- 賃料の安い物件への移転
現在の賃貸契約を見直し、より安い賃料のオフィスへ移転。 - オフィスの縮小
一部スペースを解約し、オフィスをコンパクトにする。 - シェアオフィスの利用
コワーキングスペースを活用し、固定費を削減。
② 設備・機器のリース費用の見直し
- 使われていないリース機器は解約。
- リースから中古購入に切り替え、月々の支払いをなくす。
- 例:高額なコピー機リース小型プリンター購入へ変更
③ 不動産売却・サブリースの活用
- 遊休不動産がある場合は売却し、現金化。
- 使っていないオフィスや倉庫があれば、一部をサブリース(転貸)して賃料収入を得る。
2.人件費の適正化
人件費は、固定費の中でも最も大きな割合を占めるため、適正化が不可欠です。
ただし、安易なリストラは士気低下や業務悪化を招くため、慎重に行う必要があります。
① 残業代の削減
- 業務効率を改善し、無駄な残業を削減することで、人件費を抑える。
- 例:勤怠管理システムを導入し、労働時間を適正に管理。
② 外注・業務委託の活用
- 一部業務をアウトソースし、正社員の人件費を変動費化。
- 例:経理・総務業務を外注人件費の固定負担を減らす。
③ 雇用調整助成金の活用
- 人員削減を避けるために、国の助成金制度を活用。
- 「雇用調整助成金」を利用すれば、休業中の給与の一部が補助される。
3. サブスクリプション・サービスの見直し
サブスクリプション(定額制サービス)は利便性が高いが、意外と不要なコストが積み重なっている場合があります。
① 使っていないサービスの解約
- クラウドサービス、ソフトウェア、会員制サービスなどをリストアップし、必要性を再評価。
- 例:
- 高額な会計ソフト無料のクラウド会計ソフトへ切り替え。
- ほとんど使わない有料デザインツールフリーソフトに変更。
② 料金プランの最適化
- 現在の契約プランが適切か確認し、より安いプランへ変更。
- 例:スマホやインターネット回線のプラン見直し。
4. 通信費・光熱費の削減
通信費・光熱費も固定費の中で見逃しやすいが、最適化することで大きなコスト削減につながる。
① 通信費の見直し
- 社用携帯・インターネット契約の最適化
- 大手キャリアから格安へ乗り換え。
- 使っていない固定電話回線を解約。
② 電気・水道・ガスのコスト削減
- 法人向け電力自由化を活用し、電力会社を変更。
- 節電対策として、LED照明・省エネ機器を導入。
- エアコンや照明の使用時間を管理し、電気代を削減。
5. 広告・マーケティング費の見直し
広告宣伝費は売上向上に必要だが、効果が薄い施策にはコストをかけるべきではない。
① 効果の低い広告の停止
- リスティング広告や広告の費用対効果(ROI)を分析し、利益につながらない広告を削減。
- チラシ・新聞広告よりも費用対効果の高いデジタルマーケティングへシフト。
② 無料・低コストの集客施策へ切り替え
- SNS・ブログを活用したオーガニック集客(対策)を強化。
- 口コミ・紹介制度を活用し、広告費をかけずに顧客獲得。
6. 保険料・銀行手数料の削減
保険料や金融機関への手数料も、積み重なると大きなコストになるため、見直しが必要。
① 法人保険の適正化
- 過剰な保険契約がないか確認し、不要な保険を解約。
- 例:加入目的が不明確な生命保険や損害保険の整理。
② 銀行手数料の削減
- ネット銀行の活用で、振込手数料や手数料を削減。
- 例:振込手数料無料のプランを提供する銀行を選択。
7. その他の固定費削減策
- 社用車の見直し
- 必要のない車両は売却し、カーシェアやレンタカーを活用。
- 備品・消耗品のコスト削減
- まとめ買いや業者変更でコストを下げる。
(3)利用可能な融資・補助金を活用する
赤字の状態でも、活用できる融資や補助金が存在します。資金調達の選択肢を広げることで、資金繰りの安定につながります。
政府系金融機関の融資
- 日本政策金融公庫の「経営改善サポート融資」
赤字企業や業績が悪化している企業でも、資金繰りを支えるための融資を受けられる可能性があります。 - 信用保証協会の保証付き融資
地方銀行や信用金庫と連携し、信用保証協会の保証を利用することで、資金調達がしやすくなります。
補助金・助成金の活用
- 小規模事業者持続化補助金
販路開拓や業務効率化に活用できる補助金で、最大万円の支援が受けられます。 - IT導入補助金
業務効率化のためのツール導入費用の一部を補助してくれる制度です。
(4)在庫管理の最適化
過剰在庫は、キャッシュフローを圧迫する原因となります。在庫を適切に管理し、必要最小限に抑えることが重要です。
在庫を減らすための対策
- 低回転商品の早期処分
倉庫に長期間滞留している商品は、値引き販売やアウトレット販売を活用して現金化しましょう。 - 発注の見直し
売れ行きのデータをもとに、適正在庫を維持する仕組みを構築することが重要です。
(5)収益性の高い事業に集中する
赤字企業が復活するためには、「儲からない事業」を減らし、「利益率の高い事業」にリソースを集中させる必要があります。
収益性を向上させるための施策
- 利益率の高い商品・サービスを強化
採算が取れない商品やサービスは縮小し、高利益率の分野に注力します。 - 価格の適正化(値上げ)
値上げが難しい場合でも、サービスの付加価値を高めることで単価を引き上げる方法があります。
まとめ
赤字企業が資金繰りを安定させるためには、次のつの工夫が重要です。
- 売掛金の早期回収と支払いサイトの調整(キャッシュフローを改善)
- 不要な固定費の削減(経費を抑える)
- 融資・補助金の活用(資金調達を確保)
- 在庫管理の最適化(キャッシュフローを健全化)
- 収益性の高い事業に集中(利益を向上)
資金繰りが厳しいと感じたら、早めに専門家に相談し、適切な対策を講じましょう。財務のプロフェッショナルと連携することで、より具体的な改善策を打ち出し、経営の立て直しを図ることができます。