NO171【融資審査に落ちないために知るべき「財務指標」とは?】

2025/03/24 9:36:46 - By zaimclinic
資金繰り改善 NO3
資金繰り改善 NO171【融資審査に落ちないために知るべき「財務指標」とは?】

 

はじめに:融資審査の重要性と財務指標の役割


事業を成長させるうえで、資金の確保は欠かせません。新規事業への投資、設備の導入、人材の確保そのすべてにおいて、必要となるのが「資金調達」です。そして、その中でも多くの中小企業にとって現実的な手段が「金融機関からの融資」です。

しかし、「銀行からの融資審査に落ちた」という声は少なくありません。審査に通らなければ、資金計画は頓挫し、経営に支障をきたすこともあります。では、なぜ審査に通らないのでしょうか。その大きな理由の一つが、「財務指標の不備」です。

金融機関は、企業の将来性や事業内容だけでなく、財務状況を数値的に評価します。どれだけ返済能力があるか、どれだけ安定した経営をしているかそれを見極めるために重視されるのが「財務指標」なのです。

融資を確実に受けるためには、自社の財務指標を正しく理解し、必要に応じて改善していくことが不可欠です。次に、金融機関が特に注目している代表的な財務指標を見ていきましょう。

 


 

融資審査で重視される主要な財務指標とは

 

融資審査において金融機関がチェックするのは、決算書の表面だけではありません。そこに記された財務指標から、「返済能力」「収益力」「安全性」「成長性」など、企業の総合的な健全性を読み解こうとします。

以下では、特に重視される代表的な財務指標とその評価ポイントについて、より深く解説します。

 

1. 自己資本比率

企業の財務的な安定性を示す代表的な指標。

  • 計算式: 自己資本総資本(=総資産)
  • 自己資本とは: 株主資本(資本金・利益剰余金など)の合計で、返済義務のない資金。
  • 意味合い: 自己資本比率が高いほど、借入に依存しない経営をしていると評価され、外部ショックへの耐性も強いとされます。

評価の目安:

  • 30%以上:安定的
  • 10~30%:要注意
  • 10%未満:財務的リスクが高い

注意点:
利益が出ていても、役員貸付金や繰延資産(開業費など)が多いと実質的な自己資本が減る場合があるため、「実質自己資本比率」での評価を行う金融機関もあります。



 

2. 流動比率

短期的な資金繰りの安全性を表す指標。

  • 計算式: 流動資産流動負債
  • 流動資産とは: 現預金・売掛金・棚卸資産など、年以内に現金化できる資産。
  • 流動負債とは: 買掛金・短期借入金など、年以内に返済が必要な負債。

評価の目安:

  • 200%以上:健全
  • 100~200%:標準的
  • 100%未満:資金繰りに懸念

補足:
棚卸資産が多すぎると流動比率が高く見えても、実際は現金化に時間がかかるため、金融機関は「当座比率」(現金+売掛金など流動性の高い資産に絞った比率)も参考にします。

 


 

3. 営業利益率

本業の収益力を測る指標。

  • 計算式: 営業利益売上高
  • 営業利益とは: 売上総利益から販売費・一般管理費を差し引いた、本業の稼ぐ力。

評価の目安(業種により異なるが概ね):

  • 10%以上:優良
  • 5~10%:健全
  • 5%未満:薄利
  • マイナス:本業が赤字

補足:
金融機関は、売上ではなく利益の質を重視します。一時的な利益ではなく、継続的に利益を生み出しているか、利益率の推移に一貫性があるかをチェックします。

 


 

4. 債務償還年数

借入金を何年で返済できるかを示す現実的な返済能力の指標。

  • 計算式: 有利子負債営業キャッシュフロー<br> (営業キャッシュフローが開示されていない場合は、税引後利益+減価償却費で代用)

評価の目安:

  • 5年以下:優良
  • 5~10年:標準
  • 10年以上:リスク高
  • 計算不能:赤字やキャッシュ不足の可能性あり

補足:
黒字でもキャッシュフローがマイナスだと、実際の返済能力は低いと判断されます。そのため金融機関は、会計上の利益だけでなく、キャッシュフロー計算書も精査します。

 


 

その他の注目指標(ケースに応じて)

  • インタレスト・カバレッジ・レシオ(営業利益支払利息):利息の支払い余力
  • 固定長期適合率(固定資産(自己資本+固定負債)):設備投資の健全性
  • 経常利益率:営業外収益も含めた実質的な収益力
  • 売上債権回転日数、棚卸資産回転率など:資産の効率性

 


 

金融機関の担当者は、これらの指標を単体で見るだけでなく、複数年の推移他社比較(業界平均との比較)経営者の財務理解度なども含めて総合的に判断します。

 

良好な財務指標を保つための経営アプローチ

金融機関が重視する財務指標は、数字の帳尻を合わせるだけでは改善できません。持続的な経営改善によって、初めて安定した財務体質が築かれます。ここでは、主要な財務指標を良好に保つための実践的な経営手法を、つの観点からご紹介します。

 


 

1. 自己資本比率を高める:利益の積み上げと資本増強

自己資本比率を高めるためには、「利益を出し続ける」ことが前提です。

  • 利益剰余金の蓄積:毎年の純利益を着実に積み上げることで、内部留保が増加し、自己資本比率が改善します。
  • 配当の見直し:必要以上の配当を控え、利益を内部に残す方針にする。
  • 資本注入:増資や親会社からの資本支援などにより、自己資本を直接増やす選択肢もあります。
  • 役員貸付金の整理:役員貸付が多いと、実質的に自己資本が目減りするため、個人と会社の資金を分ける意識が必要です。

 


 

2. 流動比率を健全に保つ:資金繰りの安定と在庫・売掛管理

短期の支払い能力を高めるためには、資金繰り管理が重要です。

  • 現預金の確保:一定のキャッシュリザーブ(手元資金)を持つように心がける。
  • 売掛金回収の早期化:回収サイトの短縮交渉、督促体制の強化、ファクタリングの活用など。
  • 在庫の適正化:過剰在庫は流動資産を圧迫し、資金繰りを悪化させます。定期的な在庫見直しを。
  • 短期借入金のコントロール:流動負債が過大になると流動比率が低下。長期借入やリスケによるバランス調整も検討対象。

 


 

3. 営業利益率の向上:収益構造の見直しと効率化

営業利益率は企業の「本業の強さ」を示す指標であり、ここが改善されると融資評価が大きく高まります。

  • 売上の質の向上:単価アップ、安定的な取引先の確保、定期契約の導入などで利益率を底上げ。
  • 原価の管理:仕入先の見直し、原価率の分析、材料ロスの削減などを徹底。
  • 販管費の最適化:広告費、人件費、家賃などを見直し、固定費を最適化。固定費削減は利益率改善に直結します。
  • 業務の効率化:導入や業務フローの改善で、同じ売上でも利益が出る体質に変えていく。

 


 

4. キャッシュフロー改善と債務償還年数の短縮

キャッシュフローが健全であれば、融資返済能力が高いと評価されます。

  • 利益とキャッシュの違いを理解:黒字でもキャッシュが不足している企業は意外と多く、間接法・直接法のキャッシュフロー計算書を経営者が把握することが重要です。
  • 減価償却の活用:非資金支出である減価償却費を活用して、キャッシュフローを押し上げる構造を作る。
  • 借入金のバランス管理:借入の集中返済を避け、長短のバランスを取りながら月々の返済負担を平準化。
  • 無駄な資産の整理:遊休資産の売却や不要な設備の見直しは、キャッシュの創出にもつながります。

 


 

これらの取り組みは、単年度で劇的に効果が出るものばかりではありません。しかし、継続的な努力とデータに基づく経営判断が、結果的に財務指標の改善につながり、融資審査にも強くなっていきます。

 

まとめと今後の対策:財務改善と専門家の活用

融資審査において、財務指標は単なる「数字」ではなく、企業の経営そのものを映し出す信用のバロメーターです。自己資本比率、流動比率、営業利益率、債務償還年数といった指標は、それぞれの角度から会社の健全性や将来性を見定めるための材料として、金融機関から厳しくチェックされます。

これらの指標を改善し、維持するためには、日々の経営の中で以下のような習慣的な取り組みが求められます:

  • 財務諸表を経営判断に活用する文化を作る
  • 月次決算の導入や、損益・キャッシュの見える化を行う
  • 数字の裏にある「経営実態」と向き合い、課題を早期に修正する
  • 必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、計画的に改善を図る

特に中小企業の場合、「決算書は税理士任せでよくわからない」「融資のたびに慌てて準備している」といった声も多く聞かれます。しかし、財務に強い経営者は、融資にも強いのです。 融資を単なる資金調達手段としてではなく、企業の信頼性を高めるためのチャンスと捉え、日頃からの財務整備に努めることが、結果として資金繰りの安定、事業拡大へとつながります。

 


 

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