
はじめに:経営改善計画が求められる背景と重要性
経営改善計画とは、企業が抱える経営上の問題を明確にし、それに対する具体的な解決策と数値目標を時系列で示した中期的な計画書です。特に中小企業においては、資金繰りが悪化した際やリスケジュール(返済猶予)を金融機関に要請する場面で、金融支援の根拠として提出が求められます。
近年、金融機関の融資スタンスは「担保・保証から事業性評価へ」と大きく転換しつつあります。その中で、企業の本質的な収益力や再生可能性を示す材料として、経営改善計画はますます重要性を増しています。特に、以下のような状況にある企業にとっては、必須の取り組みといえるでしょう:
- 過去の赤字経営により自己資本が毀損している
- リスケ中で元本返済が停止している
- 経常収支が継続的にマイナスで、金融機関から追加融資を断られている
- 主要取引銀行から、改善計画の提出を正式に求められている
このような文脈において経営改善計画は、「単なる希望的観測の羅列」ではなく、「現実を踏まえた具体的な再建ストーリー」でなければなりません。金融機関が求めているのは、「返済原資が将来的にどう確保されるのか」という視点です。その意味で、計画の論理性・実行可能性・定量性は、非常に重要な評価ポイントとなります。
経営改善計画の基本的な作成手順
経営改善計画は、次のような段階的プロセスを経て策定されます。それぞれのステップにおいて、事実に基づいた客観的なデータ分析と、具体的かつ実現可能な改善アクションが求められます。
1. 現状分析(自社の「正しい姿」を知る)
現状分析は計画の出発点です。感覚や希望ではなく、定量的な根拠に基づいた分析が必要です。具体的には以下のような情報を整理・分析します。
- 財務分析: 損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書から、過去〜年の業績推移を把握。売上・粗利・販管費・金融費用などの推移を時系列で分析し、財務上のボトルネックを明確化。
- 資金繰り分析: 実際のキャッシュ収支を確認し、運転資金の流れや資金不足の要因を特定。
- 事業構造の把握: 商品別・顧客別・地域別の売上構成、利益率、人員配置などを分析し、収益源と非効率領域を見極める。
- 業界比較・外部環境分析: 同業他社との指標比較や、マーケットの変化(需要減、競争激化、法改正など)を整理。
2. 経営課題の特定(真の問題を掘り下げる)
現状分析をもとに、会社が現在抱える本質的な経営課題を洗い出します。この際に注意したいのは、「表面的な現象」にとどまらず、「構造的・戦略的な要因」にまで掘り下げることです。
例:
- 売上減少商品力の低下?販売チャネルの弱体化?競合との価格競争?
- 粗利益率低下原価高騰?過剰サービス?不採算部門の放置?
- 資金繰り悪化売上減少による粗利減?過剰在庫?支払条件の不利?
このように「なぜそうなったのか(Why)」を繰り返すことで、真の改善ポイントが見えてきます。
3. 改善施策の策定(具体的なアクションプラン)
課題に対して、どのようなアクションを取るかを明確にします。単なる「コスト削減」や「売上アップ」といった抽象的な言葉ではなく、実行手段と時期、責任者、成果指標までを含めた具体策を記述します。
例:
- 既存顧客への深耕営業を強化(売上高前年比+10%)
- 不採算部門の撤退(年間固定費▲1,200万円)
- 在庫回転率をからへ改善(資金拘束の解消)
- 支払サイト延長交渉により運転資金改善(支払猶予30日→45日)
改善策は「攻め」と「守り」の両面から考えることが重要です。
4. 数値計画の作成(未来を数値で描く)
改善施策を前提に、将来の財務状態をシミュレーションします。これが、金融機関に対する最大の説明資料になります。必要な数値計画は以下のとおりです:
- 損益計画: 売上高、売上総利益、営業利益、経常利益などを年度別に示す(3~5年が一般的)
- 資金繰り計画: 月次または四半期単位でのキャッシュフロー予測(特に赤字期間中の資金ショートを回避できることが重要)
- 貸借対照表計画: 資産・負債・純資産の将来推移を示し、自己資本の回復を描く
これらの数値が、「どの改善策により、どのように変化していくのか」というロジックと整合していることが、非常に重要です。
5. モニタリング体制との明示
計画は「作って終わり」ではなく、「実行・検証・修正」がセットです。そのために、次のような体制整備を示す必要があります:
- 定期的な進捗会議の開催(例:月次で経営会議)
- KPIの設定と評価制度の導入
- 金融機関への定期報告のスケジュール化(四半期報告など)
これにより、「計画倒れ」ではなく、「確実に前に進んでいる」ことを対外的に示すことができます。
銀行を納得させるためのポイントと工夫
経営改善計画を金融機関に提出する最大の目的は、「当社は将来的に返済能力を回復できる」という信頼を得ることにあります。銀行は、営利企業である以上、「回収可能性」が見えなければ追加融資やリスケ継続には応じません。そのため、単なる熱意や一般論ではなく、「合理性」と「実行性」に裏付けられた計画が不可欠です。
ここでは、銀行を納得させるために押さえておきたい実務的なポイントと、その具体的な工夫を解説します。
1. “根拠ある数値で未来を語る
銀行が最も重視するのは「将来的にキャッシュフローが改善され、返済が可能になるのか」という点です。その判断材料となるのが、損益計画・資金繰り計画・計画です。
- 改善施策と数値の整合性があるか
たとえば「販路拡大により売上を前年比増加させる」という目標を掲げた場合、「誰に・何を・どの手段で・どれくらい売るのか」という具体性がなければ説得力はありません。 - 利益ではなくキャッシュに注目させる
銀行は返済を判断するために、会計上の利益よりも現金の動きを重視します。営業キャッシュフローの改善根拠を明示し、「この水準であれば元本返済が再開できる」という道筋を明確にする必要があります。
2. 定量情報と定性情報を組み合わせて説明する
金融機関は数字の専門家である一方、計画全体を定性的に評価しています。数字だけでは伝わらない部分を、言葉で補足することが重要です。
- 「なぜ成功するのか」のストーリー構築
例えば、「新しい営業体制で見込み顧客へのアプローチを強化する」という施策を説明する際、「営業体制をどう変えるのか」「過去はなぜ失敗していたのか」「社内での体制変更の進捗状況」などを具体的に語ることで、銀行側に変わり始めているという印象を与えることができます。 - 経営者の本気度を見せる
自社の課題をどれほど真摯に受け止めているか、どれほど厳しい状況を理解しているかは、計画書のトーンや説明の中に自然とにじみ出ます。曖昧な表現ではなく、課題に真っ向から向き合い、責任を明確にした内容であることが、信頼感につながります。
3. “過去を曖昧にしない姿勢を示す
計画を語る前に、過去の業績不振や失敗の要因をしっかりと整理し、説明することが重要です。金融機関は、「なぜ今までの経営がうまくいかなかったのか」「なぜ今度は成功すると言えるのか」を慎重に比較検討します。
- 過去の失敗から学んだことを明示する
たとえば、「業績悪化の最大要因は営業現場の属人化であり、属人化を排除するために営業マニュアルを作成し、案件管理システムを導入した」というように、問題認識と改善行動を一体で示すことが効果的です。 - 「責任逃れ」と見られないよう注意
外部環境や取引先のせいにする内容だけでは、経営者としての責任意識を疑われます。「自らの経営判断に課題があった」ことを受け入れる姿勢が、逆に信頼につながります。
4. 計画の「実行管理体制」が整っていることを見せる
銀行は「計画そのもの」よりも「その計画が実行されるかどうか」に関心を持っています。つまり、計画書の内容と同じくらい、「誰がどう実行していくのか」という体制面の説明が重視されます。
- 責任体制の明示(担当者・期限・)
施策ごとに「誰が・いつまでに・何を達成するのか」を設定し、それを経営会議等で定期的にレビューする仕組みを明示すると、実行性への信頼が高まります。 - 第三者の関与を活用する
中小企業診断士、税理士、コンサルタント、認定支援機関などの専門家が計画策定・実行に関与している場合は、それを明記しましょう。「第三者の視点」が入っている計画は、金融機関からの評価が高くなります。
5. 「他行との関係性」も意識する
複数の金融機関と取引している場合は、銀行間の公平性(フェアな情報開示・支援要請)を意識することが重要です。
- 主要行との協調体制を構築する
「銀行だけに情報提供し、銀行には後回し」という姿勢は不信感を招きます。できる限り、主要な金融機関には同時に説明し、情報を平等に共有する姿勢を示しましょう。 - 「メインバンクの支援体制」を明記する
メイン行がリスケや新規融資に応じている場合、それを他行に示すことで、支援を得られやすくなります。
銀行との信頼関係は、一度失うと再構築に時間がかかります。しかし、丁寧に計画を作り込み、真摯な説明と確実な実行を重ねることで、「再生に向けて真剣に取り組んでいる企業」として高く評価されることも十分に可能です。
経営改善計画の実行とフォローアップの重要性
経営改善計画は、単なる「書類」ではなく、企業の未来を再構築するための「実行指針」です。どれだけ立派な計画を作成しても、実行されなければ意味がありません。そして金融機関が最も注目しているのは、「この会社は、計画を継続的に実行し、成果を出す力があるかどうか」です。
ここでは、計画実行段階における重要な視点と、金融機関との関係構築において意識すべきフォローアップのポイントを解説します。
1. 「サイクル」を日常に落とし込む
計画実行のカギとなるのが、()サイクルの徹底です。これを単なる管理用語としてではなく、企業の経営習慣として根付かせることが必要です。
- Plan(計画):改善施策を数値目標・期限付きで明文化
- Do(実行):社内で責任体制を敷き、日常業務に落とし込む
- Check(検証):や月次業績報告をもとに進捗確認
- Act(改善):遅れがある場合は原因を分析し、対策を即時に講じる
例えば、売上目標が未達成であれば、見込案件の減少か、商談転換率の低下か、といった分析を行い、次の施策に反映させる。こうした柔軟かつ迅速な対応が、実行力のある企業であることを金融機関に印象づけます。
2. 進捗管理の見える化が信頼を生む
改善計画を実行する際は、社内での進捗状況を定期的に確認し、その内容を見える化することが重要です。これにより、金融機関に対しても実行状況を明確に報告でき、信頼関係の構築につながります。
- 月次での進捗報告書を作成
売上・粗利・利益・の達成状況、課題と対策を簡潔にまとめたレポートを定期的に作成しましょう。 - 金融機関への四半期報告や面談の実施
特にリスケジュール中や支援を受けている期間中は、四半期ごとに報告することで、「計画を着実に実行している」ことをアピールできます。
3. 実行段階で起こるズレへの対応力が問われる
計画と現実の間に乖離が生じることは避けられません。問題は「ズレたこと」ではなく、「どう修正し、軌道に戻すか」です。
- 柔軟な軌道修正を前提にする
計画通りに進まないことを前提に、代替案やシナリオ分析を用意しておくと、現実対応力の高さを示せます。 - 問題が起きた際の初動スピードが評価される
想定より売上が伸びなかった、コスト削減が計画ほど進まない、といった事態にもすぐに対策を講じる姿勢が、金融機関からの信用を左右します。
4. “金融機関との対話を継続することの意味
経営改善は、企業だけで完結するものではなく、金融機関との信頼関係の中で進めていく共同作業でもあります。単に「報告する」のではなく、「対話する」姿勢が、今後の資金調達力にも大きな影響を与えます。
- 良いことも悪いことも隠さず報告
報告内容は、計画比で良好な点だけでなく、未達の項目やリスクについても率直に伝え、次の改善策を共有しましょう。誠実な報告こそ、信頼の基盤です。 - 将来的な資金需要も先回りして伝える
設備投資や販路開拓に伴う資金需要が見込まれる場合は、早めに共有しておくことで、金融機関も準備ができ、協力を得やすくなります。
5. 成果が出たら実績としての信用に変える
経営改善計画を実行し、一定の成果が出始めたら、それは企業の「実績」として信用力を高める材料になります。
- 改善効果を定量的に示す
たとえば「販管費削減で営業利益が黒字化」「営業キャッシュフローが期ぶりにプラスへ転換」など、成果を数字で伝えることで、金融機関の安心感が増します。 - 今後の攻めの戦略につなげる
経営改善が安定してきたら、次は成長戦略へ移行するタイミングです。金融機関も、成長企業への投融資は積極的であるため、前向きな姿勢を示すことが今後の関係強化につながります。
まとめとアクションのご提案
経営改善計画の作成から実行、そしてフォローアップに至るまで、一貫して求められるのは「実行力」「誠実さ」「見える化」です。金融機関との信頼関係は、一朝一夕に築けるものではありませんが、着実な実行と対話の積み重ねにより、必ず評価されるものです。
当社では、経営改善計画の策定支援だけでなく、金融機関との交渉、進捗管理体制の構築、モニタリング支援までをワンストップでご提供しています。<br> 「現状に不安がある」「リスケの打診をしたいがどう説明すればいいか分からない」などのお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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