資金繰り改善 NO18
【銀行の債務者区分 その3】
●銀行融資を有利にするために。中小企業が改善すべき「定量分析指標」とは?
中小企業にとって、銀行からの融資は事業の拡大や運転資金の確保に欠かせないものです。しかし、銀行が融資を判断する際に評価する「債務者区分」において、低い評価を受けると、融資の条件が厳しくなったり、必要な資金が調達できなかったりする可能性があります。この「債務者区分」を決定するために、銀行が行う分析には、主に財務データに基づいた定量分析が含まれます。
「自己資本比率」「収益性」「キャッシュフロー」などの指標が定量分析における重要な評価項目です。これらの数値が良好であれば、銀行からの評価が上がり、融資条件も優遇されやすくなります。しかし、これらの数値を良くするには、具体的にどのような対策を取ればよいのでしょうか?
この記事では、定量分析の指標とその改善方法について解説し、企業が融資を受けやすくするためのポイントを具体的に紹介します。資金調達に不安を感じている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。また、改善に関して専門家のアドバイスを受けたい場合は、財務コンサルタントへの相談もご検討いただければと思います。
(定量分析が企業の評価に与える影響)
銀行が融資を決定する際に行う定量分析は、企業の財務健全性を客観的に示すものです。これにより、企業が短期的に返済能力を持っているか、また長期的に安定した経営ができるかが判断されます。定量分析での評価が高い企業は「正常先」や「要注意先」に分類されやすく、追加融資や金利の引き下げなど、有利な条件が提供される可能性が高まります。
逆に、収益が低迷していたり、借入に依存している企業は、財務的に不安定と見なされ、「要管理先」や「破綻懸念先」に分類されるリスクがあります。この場合、融資が受けられなかったり、金利の引き上げや追加担保を求められることもあります。
したがって、企業にとっては定量分析の数値を改善し、評価を高く維持することが、安定した資金調達と経営のために欠かせません。
(定量分析で評価される重要な指標とその改善方法)
ここからは、銀行が行う定量分析で特に重要視される指標と、それぞれの改善方法について解説します。
1. 自己資本比率の改善
自己資本比率は、企業の安定性を示す指標であり、総資産に占める自己資本の割合を示します。自己資本比率が高い企業は、銀行から「財務の安全性が高い」と評価され、融資条件が良くなる傾向があります。自己資本比率が低いと、負債に依存している状態と見なされ、区分が下がる要因となることがあります。
(改善方法)
・利益の内部留保:企業の利益を内部留保(会社内に蓄積)することで、自己資本を増やします。利益の確保はもちろん、コスト管理を徹底することも重要です。過剰な経費削減は避けつつ、無駄な支出の削減に取り組み、利益を増やして自己資本比率を高めます。
・借入の抑制:必要以上の借入を控えることも、自己資本比率の改善につながります。借入額を計画的に管理し、自己資本比率が低下しないよう注意しましょう。新たな資金調達が必要な場合は、増資や株式発行など、負債以外の方法も検討します。
・資本金の増資:出資者や株主からの増資を行うことで、自己資本を増やすことが可能です。事業計画や成長戦略を共有し、増資のための出資者を募ると、自己資本比率の改善に大きく貢献します。
2. 収益性(営業利益率・経常利益率)の向上
収益性は、企業の収益力や返済能力を示すための指標であり、営業利益率や経常利益率で評価されます。収益性が高い企業は、安定した返済能力があると判断され、融資の評価が上がります。
(改善方法)
・コスト削減と効率化:人件費や材料費、固定費を見直し、無駄なコストを削減します。特に、業務の効率化や生産性の向上を目指し、ITツールや自動化を取り入れることで、コストの削減と利益率の向上を図ります。
・売上の増加策:新規顧客の獲得や、既存顧客への追加提案を行うことで売上を増加させます。また、製品の付加価値を高め、価格設定を適正化することで、利益率の改善が期待できます。
・利益率の高い事業・商品に注力:収益性が低い事業や商品を見直し、利益率の高い事業や商品に経営資源を集中させることで、収益性の向上を目指します。特に、顧客ニーズに応じたサービスや製品の強化を行うと効果的です。
3. 営業キャッシュフローの安定化
営業キャッシュフローは、日々の営業活動で生み出される現金収支の状況を示し、企業が本業で現金を確保できているかを示す重要な指標です。営業キャッシュフローがプラスであれば、銀行は企業が安定して返済能力を持っていると判断し、区分が上がりやすくなります。
(改善方法)
・売掛金の管理強化:売掛金の回収を早めることで、キャッシュフローの安定化が図れます。支払条件を見直して短縮化するか、入金遅延の防止策を講じて、売掛金が長期滞留しないよう管理します。
・在庫の適正管理:過剰な在庫はキャッシュフローを圧迫するため、適正な在庫水準を維持することが重要です。仕入れと販売のサイクルを効率化し、在庫回転率の向上を目指しましょう。
・支出の計画管理:固定費や変動費の支出を計画的に管理し、キャッシュフローが大幅にマイナスにならないようコントロールします。大口の支出がある場合は、分割払いやリース契約を活用することも検討しましょう。
4. 流動比率の改善
流動比率は、短期資産が短期負債に対してどの程度の割合で存在するかを示す指標です。流動比率が高いほど、短期的な資金繰りが良好であると見なされ、評価が上がります。
(改善方法)
・短期負債の圧縮:短期借入金や買掛金の見直しを行い、流動負債を減らします。負債を長期借入に切り替えることで、流動比率が改善される場合もあります。
・売掛金回収の促進:売掛金の早期回収を図ることで、流動資産が増加し、流動比率が改善されます。売掛先に対して支払条件の短縮化を依頼する、もしくは期日管理を徹底して資金の早期回収に努めます。
・適切な現金預金の確保:一定額の現金預金を確保することで、流動比率が安定します。資金が余裕のある時期には、流動比率の維持を考え、預金として保有することを検討しましょう。
5. 債務償還年数の短縮
債務償還年数は、キャッシュフローで借入金を返済するのに必要な年数を示す指標です。短縮できれば銀行からの評価も高まり、債務者区分で有利な判断を得やすくなります。
(改善方法)
・営業キャッシュフローの増加:キャッシュフローを増やすため、売上の増加や利益の確保、コスト削減に取り組みます。特に、短期間で現金が確保できる施策を優先することで、債務償還年数が短縮されます。
・余剰資金での返済:営業活動で得たキャッシュが余剰になった場合、これを返済に充てることで、借入金の圧縮と債務償還年数の短縮が可能です。事前に返済計画を見直し、返済に回せる余剰資金を確保します。
・借入条件の見直し:高金利の借入を低金利に切り替えることで、利息の負担を減らし、返済期間を短縮できる場合があります。返済条件を銀行と相談し、無理のない範囲で効率的な返済方法を模索しましょう。
(債務者区分を改善するための具体策)
企業が債務者区分を改善するには、上記の各指標を良好に保つための取り組みが必要です。自社の財務状態に応じて、適切な改善策を選び、定期的なモニタリングを行うことが重要です。もし、どのように改善を進めればよいか分からない場合や、専門的な視点からアドバイスが欲しい場合は、財務コンサルタントに相談するのが効果的です。
(まとめ:財務コンサルタントとともに定量指標を改善し、安定した資金調達を目指す)
銀行からの評価を良くするためには、自己資本比率や収益性、キャッシュフローなどの定量分析指標を改善することが欠かせません。定量指標を良好に保つことは、企業の財務の健全性を示し、資金調達を有利に進めるための基盤となります。財務コンサルタントは、これらの指標を改善するための具体的なアドバイスを提供し、企業の成長と安定に向けたサポートを行います。
債務者区分や財務指標に不安を感じている場合や、より安定した経営基盤を築きたい場合は、ぜひ一度、専門家に相談してみてください。財務コンサルタントは、企業のニーズに合わせた改善策を提案し、目標達成のための支援をいたします。