NO191【「借りられない」から脱却!銀行との信頼関係を築く方法】

2025/04/13 10:00:00 - By zaimclinic
資金繰り改善 NO3
資金繰り改善 NO191「借りられない」から脱却!銀行との信頼関係を築く方法

  

はじめに:なぜ銀行からお金を借りられないのか?

「なぜうちは融資を断られるのか?」多くの中小企業や個人事業主が抱えるこの疑問には、明確な答えがあります。それは、銀行との信頼関係が十分に構築されていないという点に尽きます。

銀行は営利企業でありながら、「公共性」を持った存在でもあります。そのため、融資判断においては、返済可能性と同時に「企業の健全性」「経営者の姿勢」「継続的な取引の可能性」など、定量と定性の両面を総合的に評価します。

つまり、「数字が良ければ借りられる」とは限らず、「数字だけでは借りられない」ケースが非常に多いのです。

とくに注意すべきは、銀行が見ているのは現在の状況だけでなく、将来的なリスクや成長性も含めた信頼であるということです。赤字決算でも借りられる企業がある一方、黒字でも断られる企業があるのはそのためです。

本記事では、銀行がどのようにして信頼を判断しているのか、そしてその信頼をどのように築くべきかについて、経営実務に根差した視点から具体的に解説していきます。

「借りられない」のはあなたのせいではありません。しかし、「借りられるようになる」かどうかは、信頼関係を築く努力にかかっているのです。

 


 

銀行が見ている「信頼できる企業」の条件とは?

銀行が融資を判断する際に重視するのは、「この企業に貸しても確実に返ってくるか?」という視点です。そしてその判断の根拠となるのが、「定量情報(財務)」「定性情報(経営者・事業内容)」「情報提供の姿勢」の本柱です。ここではそれぞれの要素について詳しく見ていきましょう。

 

1. 財務面の整備:数字に基づいた信頼構築

銀行が最初に見るのは決算書です。ただし、単に黒字・赤字を見るだけでなく、以下のような点を細かくチェックしています。

  • 売上高や利益の推移(3~5年分)
  • 売掛金・買掛金のバランスと資金繰り
  • 固定費と変動費の構成、限界利益率
  • キャッシュフロー計算書による現金収支の状況
  • 借入金の返済状況と元利金の支払い能力

このような指標を見て、「この企業は数値を正しく理解し、管理しているか」を判断します。つまり、経営者が自社の財務に対してどれだけ真剣に向き合っているかが問われているのです。

また、法人税の申告と決算が一致しているか、税理士による正しい監査がなされているかなど、外部信頼性も重視されます。中には、記帳がずさんなために信用を失っているケースも少なくありません。

 

2. 経営者の姿勢と人柄:定性評価の重要性

担当者が稟議を通すうえで、必ず説明しなければならないのが「この経営者は信頼できるか?」という点です。

以下のような観点が見られています。

  • 経営者が自社の数字を自分の言葉で説明できるか
  • 経営に対するビジョンと戦略性があるか
  • 問題が起きた時に正直に報告する姿勢があるか
  • 長期的な関係を構築しようという誠実さがあるか

たとえば、業績が一時的に悪化しても、それを隠さず、その原因と今後の改善策を具体的に説明できる経営者であれば、銀行はむしろ信頼を高めます。

また、挨拶や時間厳守、言葉遣いといった基本的なビジネスマナーも無視できません。銀行は「融資だけの関係」ではなく、「長く付き合う取引先」として企業を見ているのです。

 

3. 継続的な情報開示:信頼関係は線で築く

「毎年の決算書だけ提出しておけばよい」と考えている経営者は、信頼関係構築において一歩出遅れています。

銀行との信頼関係を築くためには、以下のような継続的な情報提供が非常に効果的です。

  • 月次試算表やキャッシュフロー予測の共有
  • 新規事業や設備投資に関する資料の提出
  • 取引先の変更や人員構成の変化など、経営に関わる定性情報

こうした情報がタイムリーに共有されることで、銀行は「この会社は健全に経営している」「今後もリスク管理ができる」と評価します。これは、担当者が稟議書を作成するうえでの説得材料にもなります。

また、メールや電話でのやりとりを通じた日常的なコミュニケーションも、信頼関係の基礎を築く一環です。

 

4. 銀行内部の稟議プロセスを理解する

銀行の融資は、担当者の一存で決定されるわけではありません。現場担当者課長融資部門審査役員という複数段階のチェックが存在します。

そのため、担当者にとって「この企業の良さをどう伝えるか」が鍵となります。ここで重要になるのが、

  • 数字に裏打ちされた論理的な事業計画書
  • ビジュアルや図表を用いた資料の工夫
  • 「なぜこの資金が必要なのか」という目的の明確化

経営者がこれらの資料を自ら用意し、担当者に共有することで、銀行内部の稟議は格段に通りやすくなります。

 


 

信頼関係構築に向けた実践的なアクション

銀行との信頼関係は、短期間で築けるものではありません。日常的な経営姿勢やコミュニケーションの中で、徐々に積み重ねられる「経営者としての信用」が評価の土台となります。

ここでは、実際に中小企業の現場で取り組める具体的なアクションをつの観点からご紹介します。

 

1. 定期的な訪問・連絡の習慣化:顔の見える関係づくり

銀行との関係を強化する最初のステップは、「接点を増やすこと」です。

多くの企業は、融資を必要とする時期だけ銀行と連絡を取りますが、それでは単発的な貸し借りの関係でしかありません。これを信頼と協力の関係に変えるには、以下のような取り組みが有効です。

  • 四半期に一度の業績報告のための訪問
  • 新たな事業展開や設備導入などの情報共有
  • 資金繰りの状況を共有し、早めの相談

銀行担当者にとって、こまめに情報を出してくれる企業は「リスクを抱えても早期に相談してくれる」と感じられ、社内の稟議でも安心材料となります

また、電話やメールだけでなく、実際に会って話すことで、数字には現れない経営者の誠意や熱意が伝わります。

 

2. 数字だけでなく「ストーリー」を伝える

銀行は、財務情報だけを見て企業を評価しているわけではありません。むしろ、その数字が生まれた背景や、今後の方向性にこそ強い関心を持っています。

経営者は、以下のような「ストーリー」を交えて説明することで、数字に説得力を持たせることができます。

  • 売上減少の背景と、それに対する改善策
  • 投資計画の目的と、その投資が将来生むキャッシュの見込み
  • 過去の困難な時期をどう乗り越えてきたか

これにより、銀行担当者は数字の理由を把握でき、稟議においても「この経営者なら乗り越えられる」という信頼を上層部に説明しやすくなります。

また、事業計画書は事実+展望+戦略の点を意識し、「どの市場で、何を武器に、どのように戦うか」を明確に伝えることが重要です。

 

3. 融資を受けていない時期からの関係づくり

「お金を借りないから、銀行との付き合いは必要ない」という考え方は、大きな機会損失につながります。

銀行は、実績のある企業にはより良い条件で資金を提供する傾向があります。これはつまり、過去にスムーズな融資返済の履歴がある企業や、日常的にコミュニケーションが取れている企業に対し、内部での信用スコアが蓄積されていくためです。

以下のような行動が、融資前からの関係構築につながります。

  • 口座の主力利用(入出金・給与振込など)
  • 日常的な経営相談(資金繰り、事業承継、補助金情報など)
  • 事業計画や業績報告の自主的提出

このような姿勢を見せておくことで、「この企業なら、いざというときに支援できる」という社内評価が生まれます。

 

4. 「報告・連絡・相談」の体制を整える

社内での経営体制の整備もまた、銀行との信頼関係に大きく関わります。特に重要なのが、「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」の仕組みづくりです。

  • 役員間・幹部間での情報共有が滞っていないか?
  • 担当者に質問されたとき、迅速かつ正確に回答できる体制か?
  • 経理や総務が数字を正しく把握し、提出資料をミスなく作成できるか?

銀行から見ると、社内体制が整っている企業は「経営リスクが低く、突発的な問題にも対応できる」と判断されます。

中小企業であっても、月次で経営会議を行い、意思決定の記録を残すといった習慣を持つだけで、評価は大きく変わります。

 

これらの実践的アクションを地道に続けることで、銀行との関係は取引先からビジネスパートナーへと進化していきます。次は、このようにして築かれた信頼がどのように企業経営にプラスに働くのか、借入成功の先にある未来についてご紹介します。

 


 

信頼を資産に変える:借入成功の先にある経営の安定

銀行との信頼関係を築くことは、単なる融資を受ける手段ではなく、企業の経営基盤そのものを強化する戦略的な行動です。ここでは、築いた信頼がどのように経営を安定させ、さらに発展させる「資産」として機能するのかを具体的に解説します。

 

1. 信用格付けが上がると何が変わるか?

銀行では、融資先企業に対して「信用格付け」を付けています。これは企業の財務状態、返済実績、業績推移、経営者の対応力などを総合的に評価した社内スコアです。

この格付けが上がると、以下のような具体的なメリットが得られます。

  • 借入金利の引き下げ(例:年1.8%→年1.2%)
  • 融資期間の長期化(例:5年→10年)
  • 保証協会不要・プロパー融資への移行
  • 無担保・無保証での借入可能性の向上

つまり、信頼を積み上げることで、より有利な資金調達が可能になるのです。これが経営における金融面での競争優位性となります。

 

2. 金利・条件交渉における主導権を持てる

信頼関係ができていれば、資金調達の場面で交渉力を持つ側に立つことができます。

たとえば、

  • 金利引き下げの交渉
  • 融資返済のリスケジュール(条件変更)
  • 新規融資における柔軟な返済設計

などにおいて、銀行側が「この企業なら応じる価値がある」と判断してくれるため、経営者側の意向を通しやすくなります。

実際、信頼のある企業には、銀行から「金利を下げるので借り替えしませんか?」という逆提案が来るケースもあります。

 

3. 複数の金融機関との関係構築でリスクを分散

1行集中の取引は、金利や条件の交渉がしにくく、資金繰りにおけるリスクも高まります。信頼関係が築けていると、他の銀行との取引もスムーズに始められます。

複数行と関係を持つことで得られるメリット:

  • 一行あたりの借入依存度を下げ、金融リスクの分散
  • 相見積もりによる金利条件の競争促進
  • 緊急時に頼れる金融機関が複数あることで、資金ショートの回避

特に、新規取引を開始する際には、「他行との信頼関係」が強い信用材料となり、新たな融資の突破口となります。

 

4. 今後の資金戦略に活かすための視点

信頼を得た企業は、単に「借りられる」状態を超え、資金を攻めの経営に活かせるフェーズに移行できます。例えば:

  • 資金調達による新規事業・海外展開
  • 設備投資による生産性向上・利益率改善
  • M&Aや事業承継への資金準備

これらはすべて、安定した金融基盤と、信頼に基づく柔軟な資金調達力があって初めて実現できることです。

つまり、「信頼=経営の選択肢を広げる資産」なのです。



 

まとめ:信頼は、最強の財務戦略

銀行との信頼関係は、短期的には融資成功という形で、長期的には経営の安定と発展という形で、確実に成果をもたらします。

「借りられない」のではなく、「信頼が足りない」――

この視点を持ち、数字と誠意とストーリーで信頼を築いていくことが、財務の本質的な強化へとつながっていきます。

 


 

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