資金繰り改善 NO2
【資金が固定資産として眠っている】
資金繰りが悪くなる原因の一つに、固定資産への投資があります。
売上を増やすために、固定資産に投資するわけですが、固定資産への過剰な資金投入は、中小企業が陥りやすい資金繰り悪化の原因の一つです。
不動産や設備への投資は、事業の成長にとって重要ですが、現金が資産に変わり、すぐに回収できないため資金流動性が低下し、資金繰りが厳しくなることがあります。
今回は、固定資産への資金投入による資金繰り悪化のリスクと、その改善策について詳しく解説します。
●固定資産が資金繰りに与える影響
固定資産とは、不動産や設備など、長期にわたって使用される資産のことを指します。
例えば、新しい製造設備や店舗用の不動産を購入する場合、大きな初期投資が必要となります。
この投資が企業の収益に貢献し始めるまでには時間がかかるため、すぐにキャッシュフローには結びつかず、資金繰りに悪影響を与えることがあります。
また、固定資産は流動資産とは異なり、容易に現金化できません。
現金や売掛金などの流動資産は、短期的な事業活動で現金に変わる資産ですが、固定資産は売却や運用による収益化に時間がかかるため、資金繰りの柔軟性を低下させることになります。
●中小企業にとっての固定資産のリスク
中小企業は小企業は、大企業に比べて資金の柔軟性や手元資金の余裕が少ないため、固定資産の導入が経営に与えるインパクトが非常に大きくなります。
例えば、新しい工場や生産設備を購入した際、それらが利益を生み出す前に現金が不足し、日々の運転資金や返済に支障をきたすケースも少なくありません。
また、不動産や設備の維持管理には一定のコストがかかるため、利益を生まない期間も支出が続くという問題もあります。
こうしたリスクを回避するためには、固定資産投資の前に十分な資金計画を立て、必要以上の投資を避けることが重要です。では、具体的にどのような改善策を取れば資金繰りの負担を軽減できるでしょうか。
(固定資産による資金繰り悪化の改善策)
1. 不要資産の売却で現金化を図る
企業が所有する固定資産の中には、事業の変化に伴って使用されなくなった設備や不動産が含まれていることがあります。
こうした遊休資産や不要な不動産を売却し、現金を確保することは、資金繰り改善に効果的です。
例えば、製造工程の見直しによって使わなくなった設備、または事業拡張のために購入したものの、想定していた利用がなされていない不動産などが対象になります。
(売却のメリット)
・キャッシュフローの改善:売却によって一時的に多額の現金が確保でき、短期的な資金需要に対応しやすくなります。
・維持管理コストの削減:不動産や設備の維持には費用がかかります。不要な資産を売却することで、これらのコストも削減できます。
・新たな投資への活用:売却で得た資金は、運転資金や成長分野への投資に充てることができ、経営の安定や事業拡大にもつながります。
(売却の手順)
・資産の棚卸し:まずは保有する固定資産を棚卸しし、現在使用されていないものや必要性が低いものを特定します。・資産価値の評価:売却を検討する際は、現時点での市場価値を確認し、売却額を見積もります。
売却計画の策定:売却による資金の用途やタイミングを考慮し、事業計画に沿った形で売却を進めます。
不要資産の売却は短期的な資金調達の手段でありながら、資産効率を向上させるメリットもあります。
中小企業にとって、流動性の確保は経営を安定させるために欠かせませんので、資産の運用状況を定期的に見直し、必要に応じて売却する体制を整えましょう。
2. リースの活用で初期投資を抑える
新しい設備や機器が必要な場合、リース契約を活用することで初期投資を抑え、資金繰りの負担を軽減できます。
リースでは、設備を毎月の費用で使用できるため、購入に比べて初期のキャッシュアウトが少なく、資金の流動性を高く保つことが可能です。
(リースのメリット)
・初期投資の軽減:高額な設備を購入せずに利用できるため、資金を他の運転資金や成長のための投資に充てやすくなります。
・最新設備の利用が可能:リース契約には、一定期間後に新しい設備に更新するオプションが含まれることも多く、常に最新の技術を活用できます。
・経費計上が容易:リース料は毎月の経費として計上できるため、税務処理が簡単で、費用の見通しも立てやすいという利点があります。
(リースのデメリットと対策)
ただし、リースには購入した場合と比較して長期的にコストがかさむ可能性があるため、長期使用が確定している場合には注意が必要です。
リース契約の内容や期間をよく確認し、企業のキャッシュフローに合った条件で契約を結ぶことが重要です。
リースを導入することで、企業は常に最新の設備を低いコストで維持でき、必要に応じた設備の更新が可能になります。
初期費用が抑えられるため、特に中小企業にとって、事業拡大や新規分野進出などの柔軟な資金計画が可能になります。
3. 固定資産購入の計画的な見直し
固定資産への投資は、長期的な利益を見込んで行うものですが、タイミングや規模が適切でないと資金繰りに負担をかけることになります。
そのため、購入前には計画的な見直しを行い、過剰な投資を避けることが大切です。
(購入前に確認すべきポイント)
・収益性のシミュレーション:購入する設備がどの程度の期間で利益を生み出すか、収益シミュレーションを行い、投資に見合った利益が見込めるか確認します。
・必要性の再検討:設備が本当に必要か、リースや外部委託で代替できないかを再検討します。業務効率化や生産性向上が目的であっても、他の手段で実現可能であれば無理に購入する必要はありません。
・予算の策定と資金確保:購入に際しては、総費用と返済スケジュール、資金調達方法を詳細に計画し、適切な予算の中で投資を進めます。
計画的な見直しを行うことで、企業は必要なタイミングで適切な規模の固定資産投資を行うことができ、資金繰りへの影響を最小限に抑えられます。
(固定資産管理を効率化し資金繰りを改善するポイント)
中小企業が安定した資金繰りを維持するためには、不要資産の売却やリースの活用、そして購入計画の見直しといった取り組みを行い、資金の流動性を保つことが重要です。特に以下の点を意識することで、より効果的な改善が見込めます。
資産管理の定期的な見直し:資産状況を定期的に確認し、無駄な資産がないかをチェックします。
現金化しやすい資産構成:固定資産は必要最小限にとどめ、流動性の高い資産構成にすることで、資金調達の柔軟性を確保します。
柔軟な資金計画の実行:事業拡大に伴う資金需要や設備更新のタイミングに応じて、柔軟に資金計画を調整します。
(まとめ)
中小企業にとって固定資産は、事業を発展させるための重要な要素ですが、過剰な投資や計画性の欠如があると資金繰りを圧迫し、経営に悪影響を及ぼします。
不要資産の売却やリース契約の活用、計画的な資産購入の見直しを行うことで、固定資産が資金繰りに与えるリスクを軽減し、安定した経営基盤を築くことができます。
資金繰りの改善は企業の成長に直結するため、固定資産管理を含めた長期的な視点での経営戦略を考えていきましょう。