資金繰り改善 NO23
【「中小企業会計基準」に準拠して保証料を削減する方法】
中小企業が金融機関から融資を受ける際に活用する信用保証制度は、会社の資金調達を支える重要な仕組みです。しかし、この信用保証制度を利用する際に発生する「保証料」は、経営者にとって大きな負担になる場合があります。特に資金繰りが厳しい企業では、少しでも保証料を削減することが重要な課題となります。
「中小企業会計基準」に準拠して財務情報を整備することで、保証料を削減しやすくなる方法をご存知でしょうか?本記事では、この基準の概要や保証料削減の具体的な方法、成功事例を含めた詳細な解説を行います。
(保証料とは?)
保証料とは、中小企業が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会に支払う費用のことです。信用保証協会は、企業が融資を返済できなくなった場合に、金融機関に保証金を支払う公的な機関です。その代わりに、企業から保証料を徴収します。この保証料は融資額に対する一定の割合(保証料率)で決まります。
たとえば、1,000万円の融資を受ける場合、保証料率が1.5%なら年間15万円、1.0%なら10万円の保証料が発生します。このわずかな差でも、長期間にわたる返済スケジュールでは大きな負担減につながります。
保証料率は主に以下の要素で決定されます:
・企業の財務状況(財務が健全であるほど保証料率は低い)
(信用保証協会の審査結果)
保証制度の種類(例:一般保証、セーフティネット保証)
(中小企業会計基準とは?)
中小企業会計基準は、経済産業省や中小企業庁などが策定した、中小企業向けの財務報告基準です。中小企業が「適切かつ簡便」に財務諸表を作成できるように設計されています。この基準に準拠することで、財務情報の透明性が向上し、信用力の強化につながります。
(中小企業会計基準の主な特徴)
1. 発生主義を採用
売上や費用を「現金が動いたタイミング」ではなく、「取引が発生したタイミング」で計上します。これにより、会社の実態を正確に反映した財務諸表を作成できます。
2. 貸借対照表の作成
中小企業会計基準では、貸借対照表の作成が求められます。貸借対照表は、会社の資産(現金、売掛金、在庫など)、負債(借入金、買掛金など)、純資産(利益剰余金など)を整理し、会社の財務状況を明確に示します。
3. 注記の記載
貸借対照表や損益計算書に補足する形で、重要な情報を注記として加えます。これにより、財務諸表の信頼性と透明性が向上します。
(中小企業会計基準に準拠することで保証料が削減できる理由)
中小企業会計基準に基づいて財務諸表を作成することで、保証料削減につながるのはなぜでしょうか?主に以下の3つの理由があります。
1. 財務情報の透明性が向上
中小企業会計基準に準拠した財務諸表は、客観性と信頼性が高く、金融機関や信用保証協会からの評価が上がります。透明性の高い財務情報は、企業の信用力を示す重要な要素です。
2. 経営改善が評価される
基準に基づく会計処理を行うと、経営状態が可視化され、課題が明確になります。この情報を活用して経営改善に取り組むことで、信用保証協会からの信頼を得やすくなります。
3. 保証料率優遇制度の適用が可能
信用保証協会では、中小企業会計基準に準拠した財務諸表を提出することで、保証料率の優遇を受けられる場合があります。これにより、保証料が直接的に削減されます。
(保証料削減のための具体的な手順)
保証料を削減するためには、以下の手順を実践することが効果的です。
ステップ1:中小企業会計基準の採用を決定
まず、自社の会計処理が中小企業会計基準に準拠しているか確認します。基準を採用していない場合、税理士や会計士に相談して準備を進めます。
具体的には、発生主義の採用や貸借対照表の作成に必要なデータ整備を行います。また、会計ソフトが基準に対応しているか確認し、必要であれば変更を検討します。
ステップ2:正確な財務諸表の作成
中小企業会計基準に基づいて財務諸表を作成します。以下のポイントを押さえましょう:
・貸借対照表を作成し、資産と負債を明確に整理する。
・損益計算書に売上や費用を正確に反映する。
・注記を加え、特記事項を説明する。
・作成した財務諸表は、税理士や会計士の確認を受けることで、より正確性が担保されます。
ステップ3:信用保証協会へのアピール
基準に準拠した財務諸表を信用保証協会に提出し、保証料率の優遇条件を満たしていることを説明します。この際、経営改善の成果や資金繰りの健全性もアピールポイントとなります。
ステップ4:経営改善の実施
財務諸表の情報を活用して、経営改善に取り組みます。たとえば:
・売掛金や買掛金の管理を徹底し、資金繰りを改善する。
・不採算部門を整理し、利益率を向上させる。
・在庫を適正化し、資産の効率を高める。
ステップ5:保証料率削減の交渉
改善した財務状況をもとに、信用保証協会や金融機関と保証料率の引き下げを交渉します。透明性の高い情報は、交渉を有利に進める武器となります。
(成功事例:製造業B社のケース)
事例概要
製造業B社は、年間3,000万円の運転資金を借り入れており、保証料率は1.5%で年間45万円の保証料を支払っていました。しかし、基準に準拠した財務諸表を作成することで状況を改善しました。
実施内容
・中小企業会計基準を採用
・貸借対照表を作成し、資金繰り表を導入。財務状況を透明化しました。
経営改善
・不採算部門を縮小し、利益率を5%向上。
・売掛金の回収条件を見直し、キャッシュフローを改善。
信用保証協会との交渉
提出した財務諸表を基に、保証料率の引き下げを申請しました。
成果
保証料率が1.0%に引き下げられ、年間30万円に削減。さらに、財務改善が評価され、金融機関からの融資枠も拡大しました。
注意点
初期コストを考慮する
中小企業会計基準の導入には、会計ソフトの変更や専門家への相談費用がかかる場合があります。ただし、長期的なコスト削減効果を考慮すると、十分に価値のある投資といえます。
(継続的な運用が必要)
基準に準拠した財務処理は一度行うだけでは効果が限定的です。継続的に実施し、定期的に財務状況を見直すことが重要です。
(まとめ)
「中小企業会計基準」に準拠することで、保証料削減だけでなく、経営の透明性と信頼性が向上します。以下の手順を実践して、会社の財務基盤を強化しましょう:
・基準を採用し、透明性の高い財務諸表を作成する。
・信用保証協会にアピールし、保証料率の優遇を受ける。
・財務情報を活用して経営改善を進める。
これらの取り組みを通じて、保証料削減とともに持続可能な経営を実現してください。