資金繰り改善 NO26
【融資の際の社長の個人保証について】
中小企業が金融機関から融資を受ける際、社長の個人保証を求められることは一般的です。個人保証とは、社長が会社の借入金の返済を個人で保証する仕組みのことを指します。会社が返済できなくなった場合、社長個人がその責任を負い、預貯金や不動産などの個人財産で返済を行わなければならなくなる可能性があります。
個人保証は、金融機関が中小企業への融資リスクを軽減するために重要な手段とされていますが、経営者にとっては大きな負担やリスクを伴います。本記事では、個人保証の仕組みやメリット・デメリット、負担を軽減するための方法、注意点について詳しく解説します。
1. 個人保証の仕組みとは?
1-1. 個人保証の基本的な考え方
個人保証は、会社が返済不能になった場合に、社長個人が返済義務を引き継ぐ契約です。融資契約時に社長が連帯保証人となることで、会社の返済能力が不十分な場合でも、金融機関は社長個人の資産を担保として融資を行うことが可能になります。
・金融機関が個人保証を求める背景には、以下の理由があります:
・中小中小企業の信用力が大企業に比べて低い。
・経営の不確実性が高く、融資のリスクが大きい。
・事業が失敗した場合に、貸し倒れリスクを軽減するため。
1-2. 個人保証の内容
・返済義務の範囲:融資元本だけでなく、未払利息や遅延損害金も含まれます。
・資産の差し押さえ:保証義務が発生すると、預貯金や不動産などの個人財産が差し押さえられる可能性があります。
・影響の範囲:保証義務は社長個人に限られず、家族にも影響が及ぶことがあります(たとえば自宅が差し押さえられる場合)。
2. 個人保証のメリット
2-1. 融資が受けやすくなる
個人保証を提供することで、金融機関が貸倒リスクを軽減できるため、融資が承認されやすくなります。特に、創業時や新規事業展開時など、会社の信用力が十分でない場合には、個人保証が融資を受けるための重要な条件となります。
2-2. 融資条件が有利になる
個人保証を付けることで、金利が下がったり、融資可能額が増える場合があります。これは、金融機関が保証付き融資をリスクが低いものとして評価するためです。
2-3. 短期的な資金ニーズに迅速対応可能
個人保証があることで、金融機関が迅速に融資を実行しやすくなります。これにより、急な資金需要や事業拡大に対応しやすくなります。
3. 個人保証のデメリット
3-1. 個人資産へのリスク
最大のデメリットは、会社が融資を返済できなくなった場合に、社長個人が全額返済の義務を負うことです。その結果、個人資産(預貯金、不動産、将来の収入など)が差し押さえられる可能性があります。
3-2. 家族への影響
個人保証が発動されると、社長個人だけでなく、その家族にも影響が及びます。特に自宅が差し押さえられた場合、家族の生活基盤が失われるリスクがあります。
3-3. 再起の困難さ
会社が倒産した場合、保証によって多額の負債を抱えた社長が新たな事業を立ち上げるのは困難になります。信用情報にも影響を与え、追加の融資を受けることが難しくなります。
4. 個人保証を軽減・回避する方法
4-1. 経営者保証ガイドラインを活用する
日本では「経営者保証ガイドライン」が策定されており、一定の条件を満たすことで個人保証を軽減または回避することが可能です。
(ガイドラインの適用条件)
・法人と個人の財務が分離:法人名義の口座を使用し、個人資産と会社資産を明確に区別して管理。
・資金管理の適切性:会社の資金繰り管理が適切に行われていること。
・財務健全性:一定の財務基盤を維持していること(自己資本比率が一定以上など)。
(ガイドラインの主な効果)
・個人保証を求められない融資が可能になる。
・返済不能時の生活基盤を守る仕組みを提供。
4-2. 法人の信用力を強化する
個人保証を回避するには、法人自体の信用力を高めることが重要です。以下の方法を実践しましょう:
・適切な会計処理を行い、財務諸表を整備する。
・自己資本比率を向上させ、財務の安定性を示す。
・継続的な利益を確保し、返済能力をアピールする。
4-3. 他の担保や保証制度を活用する
個人保証を回避または軽減するために、以下の方法も検討できます:
・会社資産の担保提供:不動産や設備を担保として差し入れることで、個人保証を不要にする。
・信用保証協会の活用:信用保証協会付きの融資を利用することで、金融機関のリスクを分散させる。
5. 個人保証を軽減するための注意点
5-1. 法人と個人の財務を明確に分離する
個人保証を軽減または回避するためには、会社資産と個人資産を完全に分離して管理することが重要です。混在している場合、金融機関は法人と個人の財務健全性を判断しづらくなります。
5-2. 最悪のケースを想定して計画を立てる
会社が返済不能に陥った場合のリスクを具体的に想定し、リスクヘッジを行いましょう。保証義務が発生した場合でも、一定の生活基盤を維持できる準備を整えることが重要です。
5-3. 専門家に相談する
個人保証に関する契約内容は複雑であり、法的リスクを伴うことがあります。税理士や弁護士、金融アドバイザーに相談し、不利な条件を避けることが重要です。
6. 成功事例:個人保証を軽減した製造業A社のケース
(背景)
A社は新製品開発のために3,000万円の融資を申請しましたが、金融機関から個人保証を求められました。社長はリスクを最小限に抑えるため、経営者保証ガイドラインの活用を検討しました。
(対策)
・法人と個人の財務を分離し、財務諸表を整備。
・信用保証協会を活用し、個人保証の範囲を融資額の50%に限定。
・事業計画書で返済計画を詳細に示し、金融機関と交渉。
(結果)
金融機関は個人保証の範囲を大幅に縮小し、低金利での融資を実行。社長のリスクを軽減しつつ、資金調達を実現しました。
(まとめ)
個人保証は、融資を受けるための有効な手段である一方、社長個人に大きな負担とリスクを課す制度です。以下のポイントを押さえて、適切に対応しましょう:
・経営者保証ガイドラインを活用し、保証負担を軽減する。
・法人の信用力を高め、個人保証を求められない状況を整える。
・他の担保や信用保証協会を活用して代替手段を模索する。
・専門家の助言を受け、契約条件を慎重に確認する。
リスクを最小限に抑えながら、必要な資金を確保することが経営安定への鍵となります。適切な準備と交渉で、個人保証を有効に活用しましょう。