資金繰り改善 NO27
【使わない資産は早期に売却するべき理由】
中小企業の経営において、事業運営に必要な資産の有効活用は非常に重要です。しかし、不要になった設備や未使用の不動産など、「使わない資産」を抱え続けているケースは少なくありません。このような資産をそのまま保有していると、収益を生まないだけでなく、コストや経営リスクが増加し、事業の成長を阻害する要因にもなります。
使わない資産は早期に売却することで、経営の健全化やキャッシュフローの改善につながります。本記事では、使わない資産を売却すべき理由を具体的な実例とともに詳しく解説し、売却の成功につなげる方法をご紹介します。
1. なぜ使わない資産を早期に売却すべきなのか?
使わない資産を抱え続けることには、以下のリスクと課題があります。
1-1. 資産が収益を生まない
使われていない資産は、企業にとって「塩漬け」の状態です。動かない機械、稼働していない倉庫などは、本来の収益を生み出す役割を果たしておらず、ただ維持されているだけの存在になっています。経営資源を最大限に活用できない状況が続くと、資産が会社全体の負担となります。
実例:
製造業B社は、大型設備の一部が新型機械に置き換えられたことで旧設備が遊休化しました。しかし、売却せずに倉庫に保管していたため、毎年200万円以上の保管コストが発生していました。
1-2. 維持費用の負担が増える
使っていない資産でも、固定資産税、メンテナンス費用、保険料、保管費用などが発生します。これらの費用は経営を圧迫し、収益性を低下させる要因となります。
実例:
小売業C社は、使わなくなった郊外の倉庫を保有していましたが、年間の固定資産税が約150万円かかり、管理のために月2回の巡回費用も発生していました。
1-3. 資産価値の目減り
特に設備や車両などの動産は、時間の経過とともに減価償却が進み、資産価値が下がります。また、不動産でも市場の動向次第では価値が下落することがあります。使わない資産を長期間保有することで、将来的な売却価格が低くなるリスクがあります。
実例:
物流業D社は、使わなくなったトラックを3年間保有していましたが、その間に市場価格が30%下落。タイミングを逃したことで、売却価格が想定よりも低くなりました。
1-4. キャッシュフローが圧迫される
資産を保有しているだけでは現金を生み出すことはありません。必要な資金が不足している場合、不要な資産を売却して現金化することで資金繰りを改善できます。
2. 使わない資産を売却するメリット
2-1. キャッシュフローの改善
使わない資産を売却することで、現金を即座に確保できます。この資金を運転資金や新たな投資に回すことで、事業の活性化につなげられます。
実例:
製造業E社は、未使用の土地を売却して3,000万円を確保。その資金を新製品開発に充てたことで、1年後に売上が25%増加しました。
2-2. 維持コストの削減
不要な資産を売却することで、固定資産税やメンテナンス費用を削減できます。これにより、経常的なコストを減らし、収益性が向上します。
実例:
サービス業F社は、売却した使わないビルの年間維持費400万円を削減。その結果、固定費が減り、利益率が2%向上しました。
2-3. 財務体質の強化
売却資金を借入金の返済に充てれば、負債を削減し、財務基盤を強化することができます。自己資本比率の向上により、金融機関からの評価も高まります。
実例:
食品製造業G社は、工場の遊休地を売却して得た資金でプロパー融資を一括返済。自己資本比率を10%から20%に改善し、次の融資枠を確保しました。
2-4. 経営資源の効率的な活用
不要な資産を売却することで、経営資源を収益性の高い事業や成長分野に集中できます。これにより、企業全体の生産性と効率性が向上します。
3. 資産売却を成功させる手順
ステップ1:資産の棚卸し
保有するすべての資産をリストアップし、使用状況や収益性を確認します。「現在使用していない」「将来の利用予定がない」資産を特定します。
例:
運輸業H社は、保有する車両20台を調査した結果、5台が長期間稼働していないことを確認しました。
ステップ2:資産価値の評価
資産の市場価値を専門家に依頼して評価します。不動産鑑定士や中古機械の専門業者に相談し、適正価格を把握することで、最適な売却計画を立てることができます。
ステップ3:売却目的の明確化
売却の目的を明確にします。資金調達、借入金返済、維持費削減など、目的に応じた売却プランを策定します。
ステップ4:売却時期と取引先の選定
市場動向を調査し、売却に適したタイミングを選びます。また、売却先候補を比較検討し、最適な取引相手を選びましょう。
例:
飲食業I社は、遊休不動産の売却で複数の業者から見積もりを取り、最高値を提示した企業に売却しました。
ステップ5:専門家のサポートを活用
売却には税務や法務の手続きが伴います。税理士、弁護士、不動産業者などの専門家の助言を受けながら進めることで、トラブルを回避し、スムーズに取引を進められます。
4. 成功事例:建設業J社の資産売却
(背景)
建設業を営むJ社は、数年前に取得した郊外の未使用の土地を保有していました。しかし、事業計画が変更されたため活用の見込みがなく、年間の固定資産税が100万円以上発生していました。一方で、事業拡大のための資金が不足しており、新規融資を検討していました。
(対応)
・土地の市場価格を不動産業者に依頼して評価。
・売却益を新規設備投資の資金として活用する計画を策定。
・税理士の助言を受けて、売却益の税務処理を適切に行う準備を進めた。
(結果)
土地を売却して得た3,500万円を新規事業の設備投資に充てたことで、生産能力が20%向上。翌年の売上が30%増加し、営業利益が大幅に改善しました。
5. まとめ
使わない資産を保有し続けることは、企業の成長を阻害するだけでなく、財務状況の悪化やキャッシュフローの圧迫を招きます。一方で、不要な資産を早期に売却することで以下の効果を得られます:
・キャッシュフローの改善
・維持コストの削減
・財務体質の強化
・成長分野への投資余力の確保
売却には市場の動向や税務処理の注意が必要ですが、適切な計画を立てて進めることで、企業の健全化と成長を実現できます。専門家のサポートを受けながら、ぜひ資産の有効活用に取り組んでください。