資金繰り改善 NO29
【買掛金の翌月払いを翌々月払いに変更することの効果】
中小企業の経営において、資金繰りを適切に管理することは事業の安定と成長のために欠かせません。特に、仕入れ代金(買掛金)の支払いスケジュールを見直すことは、キャッシュフローを改善する効果的な方法です。買掛金の支払いを「翌月払い」から「翌々月払い」に変更することで、資金の回転期間が長くなり、手元資金を効率的に活用できるようになります。
本記事では、買掛金支払いスケジュールの変更が資金繰りに与える影響、実際に変更する際の注意点、そして成功事例について、具体的に解説します。
1. 資金繰りにおける買掛金支払いの重要性
買掛金は、中小企業が仕入れや取引先からの商品・サービスを後払いで購入した際に発生する債務です。この支払いタイミングは、資金繰りの良し悪しを左右する重要な要素となります。
1-1. 翌月払いの課題
多くの中小企業では、仕入れ代金を「月末締め翌月払い」で支払う契約が一般的です。しかし、業種や取引先の状況によっては売上の回収が遅れることがあり、売上金が入金される前に仕入れ代金を支払う必要が出てきます。このタイミングのズレが資金不足を引き起こし、短期融資に頼らざるを得ないケースも少なくありません。
例:建設業A社のケース
A社は、月末締め翌月15日払いで資材を仕入れていました。一方で、工事代金の入金は90日後。この支払いサイクルのズレにより、常に資金繰りが厳しくなり、年利5%の短期融資を利用して資材代を補填していました。
1-2. 翌々月払いの効果
支払いを翌々月に延ばすことで、仕入れ代金の支払いと売上金の入金タイミングのズレを解消できます。これにより、手元資金をより長く確保し、経営の安定を図ることが可能です。
2. 買掛金の支払いを翌々月払いに変更するメリット
2-1. キャッシュフローの改善
買掛金の支払いタイミングを延長することで、支払う前に売上金を回収できる可能性が高まり、キャッシュフローが安定します。特に、仕入れが多い業種や売上回収までに時間がかかる業界では、この変更が大きな効果を発揮します。
実例:製造業B社
B社では原材料を月初に大量に仕入れ、製品を生産・出荷していました。これまでは翌月払いでしたが、売上金の回収は出荷から60日後。支払いを翌々月払いに変更したことで、月に1,000万円の資金余裕が生まれ、短期融資が不要になりました。
2-2. 短期融資への依存を削減
買掛金の支払い期間が延びることで、運転資金を賄うための短期融資や当座貸越の利用を減らすことができます。その結果、利息負担が軽減され、経営コストが削減されます。
実例:小売業C社
C社は、仕入れ代金の支払いが翌月払いである一方、売上回収は40日後。毎月1,000万円を当座借越で補填していましたが、支払いを翌々月払いに変更したことで、年間50万円の利息削減に成功しました。
2-3. 資金の有効活用
支払いを延ばして確保した余裕資金を、新たな投資や運転資金に回すことで、収益の拡大や事業の成長を促進することが可能です。
実例:飲食業D社
D社は、仕入れ代金の支払い条件を翌々月払いに変更したことで、浮いた資金を広告費として活用。地域限定のキャンペーンを実施した結果、月間売上が20%増加しました。
3. 買掛金支払い変更の注意点
買掛金の支払いスケジュールを変更する際には、取引先との交渉が必要です。無理な変更を求めると、取引関係に悪影響を及ぼす可能性があるため、慎重な対応が求められます。
3-1. 取引先との交渉ポイント
・支払い条件の変更を成功させるためには、取引先に納得してもらうことが重要です。以下のポイントを意識して交渉を進めましょう:
・変更理由を明確に説明:資金繰り改善や事業成長のためであることを正直に伝える。
・相手にメリットを提供:例えば、取引量の増加や長期契約の締結を提案することで、取引先にとってのメリットを示します。
実例:物流業E社
E社は仕入れ先に翌々月払いを提案する際、「契約期間を2年間延長する」「取引量を20%増やす」などの提案を行い、取引先から合意を得ました。
3-2. 契約内容の見直し
支払い条件を変更する場合、既存契約を確認し、新しい条件を契約書に明記します。口頭での取り決めは後のトラブルの原因となるため、文書で正式に合意を取り付けることが重要です。
3-3. 支払い遅延を避ける管理体制の構築
支払いタイミングを変更した後も、約束の期日を守ることが重要です。取引先からの信頼を損なうことがないよう、支払い管理を徹底しましょう。
4. 成功事例:アパレル業F社の買掛金見直し
(背景)
F社では、新商品の仕入れが集中する季節に資金繰りが悪化していました。仕入れ代金の支払いは月末締め翌月10日払い。一方で、売上回収は取引先によって30~60日後に行われるため、短期融資を繰り返して金利負担が増大していました。
(対応策)
・主要な仕入れ先と翌々月払いへの変更を交渉。
・「取引量の増加」「キャンペーン商品の優先取り扱い」などの条件を提示し、取引先のメリットを明確化。
・支払い管理体制を見直し、従来の支払い条件との混在によるミスを防ぐための仕組みを導入。
(結果)
・月間500万円の資金余裕が生まれ、短期融資が不要に。
・金利負担が年間60万円減少。
・浮いた資金を新商品開発とマーケティングに充て、翌年の売上が15%増加。
5. まとめ
買掛金の支払いを翌月払いから翌々月払いに変更することは、中小企業が資金繰りを改善するための有効な手段です。この変更により、キャッシュフローが安定し、短期融資への依存や金利負担を軽減できるだけでなく、浮いた資金を成長分野に投資することが可能になります。
(メリットのポイント)
・キャッシュフローの安定化:手元資金を確保しやすくなる。
・融資依存の削減:利息負担を軽減し、経営コストを削減。
・成長投資への活用:浮いた資金で収益性の高い事業へ投資可能。
・一方で、取引先との信頼関係を損なわないよう、慎重な交渉と契約内容の見直しが必要です。成功事例を参考に、資金繰り改善のための具体的な取り組みを進めてみてください。