NO32【賞与の時期を変更して資金繰りを改善する方法】

2024/11/30 16:21:41 - By zaimclinic
資金繰り改善 NO2
資金繰り改善 NO32

【賞与の時期を変更して資金繰りを改善する方法】


中小企業にとって、資金繰りの問題は経営の安定を大きく左右します。その中でも賞与の支払いは、一定時期に発生する大きな支出であり、経営者を悩ませる原因となることが少なくありません。しかし、賞与支給のタイミングを見直すことで、資金繰りを効果的に改善できる可能性があります。

本記事では、賞与支給時期の変更が中小企業に与える具体的なメリットや、成功事例、実施に向けた手順について解説します。さらに、従業員の理解を得るためのポイントや、賞与以外の資金繰り改善策についても取り上げます。

(賞与支給時期の現状と課題)

多くの企業で、賞与は7月(夏季)と12月(冬季)の年2回支給されています。この慣例により、以下のような資金繰りの課題が生じることがあります。

1. 資金流出の集中
特に12月は、固定費(家賃やリース料、従業員給与など)や原材料費の支払いが重なる時期です。このタイミングで賞与支給を行うことで、一時的な資金不足が生じやすくなります。

2. 売上減少時期との重複
12月は、多くの業界で取引先の営業日数が減少するため、売上が落ち込む傾向があります。この状況で賞与支給を行うと、資金流出に対するカバーが難しくなる場合があります。

3. 短期借入の増加と利息負担
賞与の支払いに備えるために短期借入を行う企業も少なくありません。しかし、この場合、利息負担が増えることで、さらなる資金繰りの負担が生じる可能性があります。


(賞与支給時期を変更するメリット)

賞与支給時期を戦略的に変更することで、次のようなメリットが得られます。

1. キャッシュフローの改善
支給時期を売上が多い月や支出が少ない月に変更することで、資金不足のリスクを軽減できます。これにより、賞与支払いのための短期借入が不要になり、利息負担も削減できます。

2. 資金の平準化
支出を分散させることで、月ごとの資金流出を均一化できます。これにより、経営者は予測可能な資金管理を実現できるようになります。

3. 従業員の信頼向上
適切に説明を行い、従業員の理解を得ることで、会社と従業員の信頼関係を強化できます。従業員が「経営改善に協力する」姿勢を持つことは、長期的な安定経営につながります。

4. 金融機関への信用向上
資金繰りが安定することで、金融機関からの信用が向上し、将来的な融資交渉がスムーズになる可能性があります。


成功事例:A社とB社の取り組み

A社:製造業(従業員60名)

課題
A社は年間売上3億円規模の中小製造業です。賞与支給は例年7月と12月でしたが、12月には売上が減少する一方で、原材料費やリース料などの固定支出が重なり、毎年短期借入を利用して賞与を支給していました。この利息負担が経営を圧迫していたのです。

対策
冬季賞与の支給時期を翌年1月末に変更しました。また、変更の理由や会社の財務状況を従業員に丁寧に説明するための説明会を実施しました。

結果
1月末は新年の受注が増加する時期であり、売上が安定。賞与支給のための短期借入が不要となり、年間約70万円の利息削減を達成しました。従業員からも「経営の安定が長期的な雇用継続につながる」と理解を得ることができ、信頼関係も向上しました。


B社:ITサービス業(従業員20名)

課題
B社はIT関連サービスを提供する企業で、受注が年末に集中しやすい業態でした。12月は多忙なため、賞与計算が遅れがちで、支給が年明けにずれ込むことが恒常化。これが従業員の不満につながっていました。

対策
年末の忙しい時期を避け、賞与支給を2月末に変更。合わせて業績連動型の賞与評価システムを導入し、より公平感のある支給体制を整備しました。

結果
従業員の不満が解消され、退職率が低下。さらに、2月末に支給することで資金繰りの安定化も実現しました。従業員満足度の向上が業績改善にも寄与し、結果として売上が前年同月比で15%増加しました。

実践:賞与支給時期変更の進め方
賞与支給時期を変更する際には、以下の手順に従うとスムーズに進められます。


1. 現状のキャッシュフローを分析
月ごとの収入と支出を詳細に記録し、資金が余る時期や不足する時期を特定します。これにより、支給時期を変更する適切なタイミングが見えてきます。

2. シミュレーションの実施
賞与支給時期の変更によってどの程度の改善が見込めるかを数値化します。このシミュレーション結果は、従業員や経営陣に説明する際の重要な資料となります。

3. 従業員とのコミュニケーション
変更の理由や目的を丁寧に説明し、従業員の理解を得ることが重要です。生活に影響が出ないよう、変更後の支給スケジュールを事前に周知徹底します。

4. 就業規則の見直し
賞与支給時期が就業規則や労働契約に明記されている場合、労使間で協議し、必要に応じて規則の変更手続きを進めます。

(賞与支給時期以外の資金繰り改善策)

賞与支給時期の変更だけでなく、他の資金繰り改善策も併用することで、さらに大きな効果を得られます。

1. 売掛金の早期回収
取引先に対して早期支払いを促す交渉を行い、資金の回収サイクルを短縮します。

2. 仕入れ条件の見直し
仕入先と支払い条件を交渉し、支払いサイトを延長することで、資金流出を後ろ倒しにできます。

3. 固定費の削減
光熱費やリース料、保険料などの固定費を見直すことで、キャッシュフローの安定化を図ります。

4. 融資条件の改善
既存の借入金の金利や返済スケジュールを見直し、負担を軽減する方法を検討します。


(まとめ)

賞与支給時期の変更は、中小企業にとって資金繰りを改善する有効な手段です。具体例からもわかるように、適切な計画とコミュニケーションを通じて実施すれば、短期借入の削減や資金繰りの安定化、さらには従業員満足度の向上に寄与します。

資金繰りの問題に直面している中小企業経営者の方は、まず自社のキャッシュフローを見直し、改善可能なポイントを特定することから始めましょう。必要に応じて専門家に相談し、最適な対策を講じることで、経営の安定と成長を実現してください。