NO34【請求書を到着日基準にすることで資金繰りを改善する方法】

2024/12/01 13:14:52 - By zaimclinic
資金繰り改善 NO2
資金繰り改善 NO34

【請求書を到着日基準にすることで資金繰りを改善する方法】


中小企業にとって、資金繰りは経営の安定を左右する重要な課題です。商品やサービスを提供した後に発行する請求書は、入金までのサイクルを決定する重要な要素です。しかし、請求書の運用方法によっては、キャッシュフローを悪化させる原因になることもあります。

現在、多くの企業が請求書発行日を基準に支払い期日を設定しています。しかし、この方式には課題があり、資金繰りの不安定さや取引先とのトラブルを引き起こすことがあります。そこで注目されるのが、「到着日基準」を採用する方法です。

本記事では、到着日基準の運用方法、メリット、実際の成功事例、導入プロセス、注意点について詳しく解説します。


現状:発行日基準の課題

請求書を発行日基準で管理している企業の多くが、以下のような問題に直面しています。

1. 支払い遅延の増加
発行日基準では、請求書が取引先に届くまでの時間が支払い期日に反映されません。郵送や社内処理に時間がかかる場合、実際に請求書を確認できるのが遅れるため、支払いが期日を過ぎてしまうことがあります。

2. 資金繰りの圧迫
支払い遅延が発生すると、企業のキャッシュフロー計画が狂い、必要な運転資金が不足することがあります。特に中小企業では、短期借入の増加や支払い先への遅延リスクが高まります。

3. 取引先との摩擦
発行日基準では、請求書が実際に届いていないのに「支払い期日が過ぎた」とされることがあり、取引先との関係が悪化する原因となります。

4. 管理の非効率化
発行日を基準とする場合、郵送やメールでの遅延が発生すると、期日の管理が煩雑になり、経理部門の負担が増えます。


解決策:到着日基準への変更
到着日基準とは、請求書が取引先に届いた日を起点として支払い期日を設定する方法です。この変更により、企業のキャッシュフロー管理が大幅に改善されることがあります。

(到着日基準のメリット)

1. 支払い遅延の防止
到着日を基準にすることで、取引先が請求書を受け取ってから十分な支払い準備期間を確保できます。その結果、支払い遅延が減少し、安定したキャッシュフローが確保されます。

2. 資金計画の明確化
請求書到着日を基準にすることで、資金の流入タイミングが予測可能になります。これにより、他の支払いスケジュールとの調整が容易になり、短期的な資金不足を回避できます。

3. 取引先との信頼関係向上
公平性がある到着日基準を採用することで、取引先からの信頼を得ることができます。これにより、トラブルを減らし、長期的な取引関係を構築することができます。

4. 業務効率の向上
到着日基準を採用すると、請求書受領の確認作業が重要になります。このプロセスが明確化されることで、経理部門の業務が効率化します。


(到着日基準の成功事例)

事例1:製造業のA社(従業員20名)

課題
A社は、部品の製造と取引先への納品を行っています。しかし、発行日基準で請求書を管理していたため、支払い遅延が常態化。結果として、運転資金が不足し、毎月の短期借入が必要な状況でした。

解決策
A社は請求書管理を到着日基準に切り替えました。請求書は電子化し、到着日をシステムで記録。支払い期日を到着日から30日後に設定する運用を開始しました。

結果

・支払い遅延が50%から5%に減少。
・短期借入が不要となり、年間利息負担が30万円削減。
・管理プロセスの効率化により、経理担当者の作業時間が20%短縮。


事例2:飲食業のB社(従業員15名)

課題
B社は、複数の仕入先から食材を調達しています。しかし、発行日基準での管理が支払いトラブルを招き、仕入先との信頼関係が悪化していました。

解決策
到着日基準を採用し、すべての請求書を受領後の確認を徹底。到着日を基に支払いスケジュールを設定しました。

結果

・支払いトラブルが完全に解消。
・仕入先との関係が改善され、新たな取引機会が増加。
・キャッシュフローの改善により、従業員の給与支払いを早期化。

導入プロセス
到着日基準を導入する際のプロセスは以下の通りです。

ステップ1:現状の問題点を把握
自社の請求書管理の課題を明確にし、到着日基準による改善点を特定します。

ステップ2:基準変更の計画策定
到着日基準を採用するための具体的な運用ルールを策定します。システム変更の必要性や取引先への説明内容もここで検討します。

ステップ3:取引先への説明と同意取得
取引先に対し、変更の目的やメリットを丁寧に説明し、協力を得ます。文書や説明会を活用すると効果的です。

ステップ4:システム導入と試行運用
電子請求書システムを導入し、到着日基準での管理を試行します。この段階で問題点を洗い出し、必要に応じて調整します。

ステップ5:正式導入と継続的な改善
本格的に運用を開始し、定期的に効果を検証します。取引先や社内のフィードバックを基に改善を続けます。


導入時の注意点
1. 取引先との調整
運用変更が取引先に影響を与えるため、導入前に十分な説明が必要です。一部の取引先から抵抗を受ける可能性を考慮して対応策を準備しましょう。

2. システム導入のコスト
電子請求書管理や到着日記録システムの導入には費用が発生します。初期投資と長期的な効果を比較して、導入の妥当性を検討してください。

3. 社内業務の調整
到着日基準の管理は、従来の方法と異なるプロセスを必要とする場合があります。社内の業務フローを見直し、担当者に十分な研修を行いましょう。


(その他の資金繰り改善策)

到着日基準の採用以外にも、以下の方法で資金繰りを改善できます。

1. 請求書発行サイクルの短縮
取引先への請求書を迅速に発行することで、入金までの期間を短縮できます。

2. 支払いサイトの交渉
仕入先と支払い条件を交渉し、支払いサイトを延長することで、資金流出を後ろ倒しにできます。

3. 売掛金の早期回収
取引先に早期支払いを促すインセンティブ(例:割引)を提供し、現金化を早める方法です。

まとめ
請求書の到着日基準への変更は、資金繰りを改善し、取引先との関係を良好に保つための有効な手段です。支払い遅延の解消やキャッシュフローの安定化、業務効率の向上といった多くのメリットが期待できます。

資金繰りに課題を抱える中小企業経営者の方は、ぜひ一度自社の請求書管理プロセスを見直し、到着日基準の導入を検討してみてください。本記事で紹介したプロセスや事例を参考に、より強固な財務基盤を構築しましょう。