資金繰り改善 NO39
【未回収売上に対する紹介料・販売手数料の支払いを見直して資金繰りを改善】
中小企業が事業を成長させる上で、紹介や代理販売を通じた新規顧客の獲得や売上拡大は非常に重要です。しかし、取引先からの代金未回収が発生した場合でも、紹介料や販売手数料を支払う契約になっていると、キャッシュフローを圧迫する要因になりかねません。このような場合、適切なルールを設定し、「未回収の売上に対しては紹介料や販売手数料を支払わない」とすることで、資金繰りの改善を図ることが可能です。
本記事では、未回収売上に対する紹介料・販売手数料を支払わない方針を導入し、資金繰りを改善した中小企業の成功事例を交え、そのメリットや導入方法、注意点について解説します。
(未回収売上に対する紹介料や販売手数料のリスク)
紹介料や販売手数料は、取引先や代理店、個人紹介者に対する成功報酬として支払われるケースが多くあります。これらの費用は売上拡大に貢献した対価として正当なものである一方で、未回収売上が発生している場合に支払いが生じることは、以下のようなリスクを伴います。
1. キャッシュフローの悪化
未回収売上がある状態で紹介料や手数料を支払うと、回収できていない売上に対して現金が流出し、資金繰りを悪化させる原因になります。
2. 不公平なコスト負担
取引が成功した場合に限らず手数料を支払う契約になっている場合、代金回収リスクを紹介者や代理店が負わないため、不公平な負担が発生することがあります。
3. 経営の透明性低下
未回収売上が多い状態で紹介料や手数料を支払うと、経営状態が不透明化し、場合によっては利益を圧迫する可能性があります。
(紹介料・販売手数料を「入金済み売上」に基づいて支払うメリット)
未回収売上に対して手数料を支払わないルールを設定することで、以下のようなメリットを得ることができます。
1. 資金繰りの安定化
紹介料や手数料を「実際に入金された売上」に基づいて支払うようにすることで、現金が手元にない状態で支払いが発生するリスクを回避できます。
2. リスク分担の適正化
代金回収リスクを紹介者や代理店にも共有する形となり、不公平な負担を軽減します。これにより、より健全な取引関係を構築できます。
3. 経営の透明性向上
未回収売上の増加による利益圧迫を防ぎ、経営の透明性を確保します。これにより、金融機関や株主などからの信頼も向上します。
4. 不良顧客の減少
紹介者や代理店が支払い能力の低い顧客を避けるようになり、不良債権が減少する効果も期待できます。
成功事例:紹介料・販売手数料ルールを見直して改善した中小企業
事例1:製造業のA社(従業員50名)
(課題)
A社は、代理店を通じて自社製品を販売していました。契約上、製品が納品された時点で代理店に販売手数料を支払う仕組みになっていましたが、一部の取引先が代金を支払わず、未回収売上が累積していました。その結果、キャッシュフローが悪化し、運転資金が逼迫していました。
(対策)
A社は代理店との契約を見直し、「販売手数料は取引先からの代金が全額入金された後に支払う」というルールを導入しました。
(結果)
・未回収売上が50%減少。
・月間キャッシュフローが平均で200万円改善。
・代理店が取引先の信用調査を積極的に行うようになり、不良債権が発生しにくい取引が増加。
事例2:ITサービス業のB社(従業員20名)
(課題)
B社は、営業代理店を通じてクラウドサービスを販売していましたが、サービス開始後の初月に紹介料を支払う契約となっていました。複数のクライアントが初回料金を滞納したため、紹介料分の資金が不足し、広告費を削減する事態に。
(対策)
紹介料を「クライアントからの初回料金が入金された後に支払う」形に変更。さらに、代理店に対して顧客審査の基準を明確化しました。
(結果)
・紹介料の支払い遅延が解消し、経営の安定化を実現。
・顧客の信用スコアが向上し、滞納率が30%減少。
・広告費を増額でき、新規顧客獲得率が前年比20%向上。
事例3:飲食業のC社(従業員15名)
(課題)
C社は、イベント会社からの紹介でケータリングサービスを提供していました。契約上、イベントが終了した段階で紹介料を支払う仕組みでしたが、一部のイベント主催者が代金を支払わないケースが増加。結果として、紹介料分の支出がキャッシュフローを圧迫しました。
(対策)
C社はイベント会社との契約を変更し、「紹介料は代金が全額回収された後に支払う」とする新ルールを設定。さらに、主催者の信用調査を事前に実施する体制を整えました。
(結果)
・キャッシュフローが月間平均で150万円改善。
・主催者との支払いトラブルが解消し、紹介イベント数が増加。
・紹介元との関係が強化され、リピート率が25%向上。
・導入方法:紹介料・販売手数料ルールの見直し
ステップ1:現状の契約条件を確認
現在の契約内容を見直し、手数料支払いのタイミングや基準を把握します。
ステップ2:新しいルールの策定
「紹介料・販売手数料は入金済み売上に基づいて支払う」という条件を明文化します。具体的な支払いタイミングや方法も明確にしましょう。
ステップ3:取引先への説明
新ルールを導入する理由やメリットを取引先に説明し、双方が納得した上で契約を変更します。信頼関係を重視し、丁寧な対応を心がけます。
ステップ4:運用開始とモニタリング
新ルールを適用し、支払い状況や未回収売上の動向を定期的に確認します。必要に応じてルールの調整を行います。
(注意点)
1. 取引先との信頼関係を重視
契約変更は取引先に負担を与える場合があります。取引先に対して丁寧に説明し、信頼関係を損なわないように注意しましょう。
2. 契約書の見直しと法的確認
新ルールを導入する際は、契約書の内容を法的に確認し、適切な文言で明文化することが重要です。
3. 柔軟な対応
取引先の事情によっては、支払い条件を個別に調整する必要があります。柔軟な対応がトラブル防止につながります。
(まとめ)
未回収売上に対する紹介料や販売手数料を見直すことは、中小企業の資金繰りを改善するために効果的な手段です。成功事例にあるように、入金済み売上に基づいた手数料支払いのルールを導入することで、キャッシュフローの安定化やリスク軽減が期待できます。
自社の契約条件を見直し、取引先との信頼関係を重視しながら新ルールを導入することで、健全な経営基盤を構築してください。