
資金繰り改善 NO44
【合い見積もりの活用で資金繰り改善】
はじめに
中小企業が抱える最も重要な経営課題の一つが資金繰りです。安定した資金繰りを実現するためには、売上の確保だけでなく、支出の最適化も重要な要素となります。しかし、多くの中小企業では、特定の取引先や業者との継続取引に頼りきりになり、調達コストや支払い条件の見直しが後回しにされがちです。
そんな中、効率的な支出管理の手法として注目されているのが「合い見積もり」の活用です。複数の業者から見積もりを取得することで、コストの透明性を確保し、価格競争を促すことができます。本記事では、合い見積もりを取ることでどのように中小企業の資金繰りが改善されるのかを、具体例を交えて詳しく解説します。
◇ 合い見積もりとは?
(定義)
合い見積もりとは、同一または類似の商品やサービスを調達する際に、複数の業者から見積もりを取得し、価格や条件を比較検討するプロセスを指します。これにより、最適なコストパフォーマンスを持つ業者を選定することが可能となります。
(合い見積もりの目的)
合い見積もりの主な目的は以下の通りです:
・コスト削減
最も安価な業者を選定することで、調達コストを削減します。
・条件の改善
支払い条件や納期、アフターサービスなど、価格以外の条件を最適化します。
・透明性の確保
価格決定のプロセスを明確化し、不透明な取引や不正のリスクを低減します。
・業者間競争の促進
競争を促すことで、業者側にとってもサービスや価格の改善が期待できます。
(合い見積もりの導入が中小企業に与える影響)
資金繰りへの影響
・直接的なコスト削減
商品やサービスの単価が削減されることで、同じ予算でより多くの調達が可能になります。また、余剰資金を他の経営活動に回せるため、キャッシュフローが改善します。
・支払い条件の交渉力強化
合い見積もりを取ることで、業者に対してより良い支払い条件(例:長期支払い期限、分割払いなど)を求める交渉材料が増えます。
・不必要な支出の削減
価格比較により、過去の取引が市場価格よりも高額であったことに気付き、不必要なコストを削減できます。
実例:合い見積もりで資金繰り改善に成功した事例
事例1:オフィス用品の調達見直し
(背景)
東京都内でコンサルティング業を営むA社は、従業員20名規模の中小企業です。同社ではオフィス用品の調達を長年同じ業者に依頼していました。しかし、毎月の調達コストが高額で、特にペーパーレス化の進む中で不必要な備品も購入していることが問題視されていました。
解決策
A社は以下の手順で合い見積もりを実施しました:
・複数業者に見積もりを依頼
主要なオフィス用品のリストを作成し、同業他社3社に見積もりを依頼しました。
・価格と条件の比較
価格だけでなく、納期や配送サービスの有無などの条件も比較しました。
・条件の再交渉
現行業者に対し、他社の見積もりを提示して価格交渉を行い、割引や条件改善を引き出しました。
(結果)
・調達コストが年間で15%削減(約50万円)
・支払い期限が従来の30日から45日に延長
・無料配送サービスが追加され、経費削減効果が向上
これにより、A社は浮いた資金を新規プロジェクトの開発費に充当できました。
事例2:設備メンテナンス契約の見直し
(背景)
福岡県で製造業を営むB社は、機械設備のメンテナンスを特定の業者に一括依頼していました。しかし、メンテナンス費用が他社よりも高額である可能性が指摘され、資金繰りの改善を図るため合い見積もりを検討しました。
(解決策)
・メンテナンス内容の洗い出し
現行契約を確認し、必要なサービス内容を明確化しました。
・地元業者を含めた見積もり取得
新たに地元の中小メンテナンス業者を含めた4社から見積もりを取得しました。
・長期契約の条件交渉
契約期間を1年から3年に延長することで、ボリュームディスカウントを得られる交渉を行いました。
(結果)
・メンテナンス費用が年間で25%削減(約200万円)
・地元業者の採用で納期短縮と現場対応力が向上
・長期契約により追加割引を享受
この結果、B社はコスト削減分を設備の更新資金として活用し、生産性を向上させることができました。
(合い見積もりを成功させるためのポイント)
1. 具体的な依頼内容を明確にする
見積もり依頼時には、調達する商品やサービスの仕様、納期、品質基準を明確に伝えることが重要です。不明確な依頼では正確な見積もりを得られません。
2. 複数業者を選定する
可能な限り3社以上から見積もりを取得することで、価格や条件を多角的に比較できます。また、地元業者や新規業者も積極的に検討することで、予期せぬコスト削減効果が得られる場合があります。
3. 条件だけでなく総合的な価値を評価する
価格だけでなく、納期、アフターサービス、信頼性なども考慮し、総合的に最適な業者を選定します。
4. 交渉力を活用する
他社の見積もりを提示することで、現行業者や候補業者との交渉力を高め、より良い条件を引き出します。
(合い見積もり導入時の注意点)
・業者選定の公平性を保つ
業者間で公平な競争が行われるよう、見積もり条件を統一し、主観的な判断を避けます。
・既存の取引先との関係維持
新規業者に切り替える場合でも、既存業者との関係を適切に管理し、将来の取引の選択肢を残します。
・隠れたコストを見落とさない
見積もり金額に含まれない隠れたコスト(例:配送費、保険料など)を注意深く確認します。
(まとめ)
合い見積もりは、中小企業が調達コストを削減し、資金繰りを改善するための強力なツールです。適切に活用すれば、価格競争を通じて最適なコストパフォーマンスを実現するだけでなく、支払い条件やサービスの質も向上させることが可能です。
事例として取り上げたA社やB社の成功例は、合い見積もりが資金繰りの改善に与える具体的な効果を示しています。中小企業経営者の皆さまには、調達プロセスを見直し、合い見積もりを積極的に活用することで、安定した財務基盤を築いていただきたいと思います。