NO67【経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)について】

2024/12/18 9:44:09 - By zaimclinic
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経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)について


経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、中小企業が取引先の倒産や売掛金の回収不能といった経営リスクに備えるための公的な共済制度です。この制度を活用することで、取引先が突然倒産した場合でも資金繰りを安定させ、経営を継続するための資金を確保することができます。本記事では、経営セーフティ共済の概要、加入条件、メリットやデメリット、そして活用方法について詳しく解説します。


◇ 経営セーフティ共済の概要

経営セーフティ共済は、独立行政法人中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が運営する共済制度で、中小企業が取引先の倒産リスクに備えることを目的としています。


(主な特徴)

取引先の倒産に備えた制度:

取引先が倒産した場合に、無利子の貸付を受けることができます。


毎月の掛金で積み立て:

掛金を毎月積み立て、必要なときに活用する仕組みです。


節税効果がある:

掛金は全額損金(法人の場合)または必要経費(個人事業主の場合)として計上できます。


柔軟な解約が可能:

解約時には、掛金総額の一部または全額が戻ってきます。


(加入条件)

経営セーフティ共済に加入するには、以下の条件を満たす必要があります。


対象者:

中小企業基本法に定める中小企業者(資本金、従業員数などの基準を満たす企業)

個人事業主

取引先:

加入後に万が一取引先が倒産した場合、その取引先に対する売掛金や貸付金が存在することが必要です。


掛金:

掛金は月額5,000円から20万円の範囲で設定可能。変更も随時可能です。


(メリット)

経営セーフティ共済には、中小企業経営者にとってさまざまなメリットがあります。


1. 取引先倒産リスクへの備え

取引先が倒産して売掛金の回収が不能になった場合でも、無利子で共済金貸付を受けることができます。これにより、資金ショートのリスクを軽減できます。

例:

製造業のA社は、主要取引先が倒産し、5,000万円の売掛金が回収不能になりました。経営セーフティ共済から2,000万円を無利子で借り入れることで、仕入代金や人件費を賄い、事業を継続できました。


2. 節税効果

掛金は全額損金(法人の場合)または必要経費(個人事業主の場合)として計上できるため、税負担を軽減できます。これにより、将来のリスクへの備えをしながら節税効果も享受できます。

例:

建設業のB社は、年間240万円の掛金を支払うことで法人税の課税所得を圧縮し、毎年約72万円の税金を削減しています。


3. 柔軟な解約と資金の確保

解約時には、掛金総額の一部または全額が戻ってきます。解約返戻率は加入期間に応じて変動しますが、10年以上継続した場合、掛金総額の100%が返戻されます。

例:

飲食業のC社は、資金需要の高まりから共済を解約し、10年間積み立てた総額1,200万円を手元資金として活用しました。


4. 財務体質の安定化

経営セーフティ共済を活用することで、自己資本比率を向上させ、財務の安定化を図ることができます。

例:

卸売業のD社は、解約返戻金を自己資本に組み入れることで、金融機関からの信用力が向上し、低金利で追加融資を受けることができました。



(デメリット)

経営セーフティ共済にもいくつかのデメリットがあります。


1. 短期間で解約すると返戻率が低い

加入期間が短い場合、解約返戻率が掛金総額よりも低くなるため、早期解約には注意が必要です。

例:

物流業のE社は、加入から2年で解約したところ、掛金総額240万円に対し返戻金は216万円にとどまりました。


2. 資金拘束のリスク

掛金を積み立てるため、短期的な資金需要に対応する余裕が減る可能性があります。


3. 取引先倒産以外のリスクには対応できない

経営セーフティ共済は、取引先倒産に伴うリスクへの備えが目的であり、他の経営リスク(自然災害や市場変動など)には対応できません。



(成功事例)

1. リスクを事前に軽減し、経営を安定化

小売業のF社は、主要取引先3社のうち1社が倒産し、売掛金1,500万円が未回収となりました。経営セーフティ共済から1,000万円を無利子で借り入れ、仕入れと人件費を賄ったことで事業を継続。その後、新規顧客を開拓し、売上を回復させました。


2. 計画的な解約で事業拡大資金を確保

IT企業のG社は、10年間積み立てた共済を解約して、解約返戻金3,000万円を新規事業の初期投資に充当しました。これにより、資金調達のための借入を抑え、安定した事業拡大を実現しました。



(活用する際のポイント)

1. 毎月の掛金を適切に設定

掛金は、無理なく支払える範囲で設定しましょう。必要に応じて増減可能なので、経営状況に応じて見直すことが重要です。


2. 長期的な視点で加入を検討

解約返戻率が最大化されるのは10年以上加入した場合です。短期解約は損失となる可能性があるため、長期的な視点で計画を立てましょう。


3. 専門家のアドバイスを活用

税理士や財務コンサルタントに相談することで、掛金設定や解約タイミングの最適化が図れます。


(まとめ)

経営セーフティ共済は、中小企業が取引先倒産リスクに備え、資金繰りを安定化させるための有効な制度です。掛金の損金算入による節税効果や、解約時の返戻金を活用した資金調達の柔軟性など、多くのメリットがあります。ただし、短期解約による返戻率の低下や、資金拘束のリスクも考慮する必要があります。

制度の効果を最大限に引き出すためには、経営状況や将来の資金需要を見据えた計画的な利用が求められます。ぜひ、経営セーフティ共済を活用し、予測不能な経営リスクに備えた強固な経営基盤を構築しましょう。