資金繰り改善 NO75
【資金の調達方法 その5(ファクタリング)】
◇ ファクタリングを活用した資金調達方法とそのメリット・デメリット
ファクタリングは、企業が保有する売掛債権を第三者のファクタリング会社に売却し、現金を早期に手に入れる資金調達方法です。特に中小企業において、売掛金の回収までの期間が長く、資金繰りが厳しい場合に活用されるケースが増えています。本記事では、ファクタリングの仕組み、活用方法、メリットとデメリット、さらに成功事例や失敗事例を交えて、詳しく解説します。
1. ファクタリングとは
ファクタリングとは、売掛金(取引先から受け取る予定の代金)をファクタリング会社に売却し、現金化する資金調達の手法です。通常、売掛金は支払い期限まで回収できませんが、ファクタリングを活用することで早期に現金を得ることが可能です。
1-1. ファクタリングの種類
ファクタリングには以下の2つの主な形態があります:
2者間ファクタリング
売掛債権を保有する企業とファクタリング会社の間で取引を行います。取引先(売掛先)には通知されません。
3者間ファクタリング
売掛債権を保有する企業、ファクタリング会社、売掛先(取引先)の3者間で契約を結び、売掛先の承認のもと債権が売却されます。
2. ファクタリングの利用方法
2-1. ファクタリングの手続き
ファクタリングを利用する際の主な流れは以下の通りです:
・売掛金の選定
売掛債権の内容(取引先、金額、支払い期日など)を確認します。
・ファクタリング会社の選定と申し込み
ファクタリング会社に売掛金を売却する申し込みを行います。
・審査
ファクタリング会社が売掛債権の内容や取引先の信用力を審査します。
・契約締結
審査に通過した場合、ファクタリング契約を締結します。
・資金の受け取り
売掛金の一定割合(80〜90%程度)が早期に現金化されます。
・売掛金の回収
支払い期限が到来した際に、取引先から売掛金を受け取るか、ファクタリング会社が直接回収します(3者間の場合)。
3. ファクタリングのメリット
3-1. 資金調達のスピードが速い
ファクタリングは、銀行融資と比べて審査が簡易で、短期間で資金を調達できるのが大きな特徴です。急な資金需要が発生した場合でも、数日から1週間程度で現金化が可能です。
3-2. 借入ではないため、負債にならない
ファクタリングは売掛債権を売却する取引であるため、バランスシート上で負債として計上されません。このため、借入枠を残したまま資金を確保できます。
3-3. 信用力が問われにくい
ファクタリングでは、主に取引先(売掛先)の信用力が審査されるため、自社の信用力に課題がある場合でも利用しやすいのが特徴です。
3-4. 売掛金の回収リスクを軽減
3者間ファクタリングでは、ファクタリング会社が取引先から売掛金を回収するため、債権回収のリスクや手間を軽減できます。
4. ファクタリングのデメリット
4-1. 手数料が高い
ファクタリングの利用には手数料が発生し、一般的に売掛金の5〜20%程度が差し引かれます。このため、コスト負担が大きくなる可能性があります。
4-2. 資金調達額に制限がある
ファクタリングで調達できる資金額は売掛債権の額に依存します。新規取引先の売掛金や信用力が低い取引先の債権は、買い取ってもらえない場合があります。
4-3. 取引先との関係性に影響を与える可能性
3者間ファクタリングでは、取引先に売掛債権をファクタリング会社に売却したことが知られるため、信用関係に影響を及ぼす場合があります。
4-4. 不正業者のリスク
ファクタリング業界には未登録業者や違法な手法を用いる会社も存在します。信頼できる業者を選ぶことが重要です。
5. 成功事例
5-1. 成功事例:急な資金需要への対応
中小建設業者A社は、大規模な受注案件の増加に伴い、材料費や人件費の支払いが急増しました。売掛金の回収が1ヶ月後であったため、資金繰りに課題を抱えていました。
ファクタリングの活用:
A社は売掛金500万円をファクタリング会社に売却し、450万円(手数料10%)を即時に現金化しました。この資金を活用して、必要な支払いを滞りなく行い、受注案件を無事完了させました。
成功のポイント:
・ファクタリングを迅速に利用することで、資金繰りの悪化を回避。
・手数料を考慮しても、案件を完遂するメリットが上回った。
5-2. 成功事例:取引先の信用力を活用
地方の卸売業者B社は、売掛先が大手企業であったため、高い信用力を持つ債権を保有していました。資金調達が必要となり、売掛債権1,000万円をファクタリング会社に売却しました。
結果:
手数料が抑えられ(5%)、950万円を早期に現金化。これにより、新たな仕入れ資金を確保し、事業拡大に成功しました。
6. 失敗事例
6-1. 取引先との関係悪化
中小企業C社は3者間ファクタリングを利用しました。しかし、売掛先がファクタリングを「信用不安の表れ」と誤解し、取引条件の見直しを求められました。
失敗の原因:
・取引先に事前説明を十分に行わなかった。
・ファクタリングの仕組みを相手が正しく理解していなかった。
6-2. 不正業者によるトラブル
スタートアップ企業D社は、手数料が安いと宣伝していた未登録のファクタリング会社を利用。しかし、後日追加の費用を請求されるなど、予期せぬトラブルが発生しました。
失敗の原因:
・業者の信頼性を十分に確認せずに契約。
・業者の登録状況や口コミを調査しなかった。
7. ファクタリングを成功させるためのポイント
7-1. 信頼できるファクタリング会社を選ぶ
利用する会社の登録状況や実績、口コミを事前に調査し、信頼性を確認しましょう。
7-2. 手数料を事前に確認
手数料の詳細や契約条件をしっかり確認し、コスト負担を把握したうえで利用を決定します。
7-3. 取引先との関係に配慮
3者間ファクタリングを利用する場合、事前に取引先へ説明し、誤解を避けることが重要です。
7-4. 資金計画を立てる
ファクタリングによる現金化後の資金の使い道を明確にし、効率的な運用を心がけます。
8. まとめ
ファクタリングは、特に中小企業にとって迅速かつ柔軟な資金調達手段として有効です。その一方で、手数料や取引先との関係などの課題も伴います。成功事例では、急な資金需要や取引先の信用力を活用した適切な利用が功を奏しました。一方、失敗事例では、不正業者や取引先とのトラブルが問題となりました。
ファクタリングを利用する際は、信頼できる業者を選び、計画的に活用することが成功の鍵です。また、財務コンサルタントや専門家に相談することで、適切なファクタリングの選択やリスク管理を行うことが可能です。資金調達の選択肢として、ぜひファクタリングの活用を検討してみてください。
◇ ファクタリングを活用する前に財務コンサルタントに相談すべき理由
ファクタリングは、売掛金を早期に現金化できる迅速な資金調達手段として、中小企業をはじめ多くの企業で利用されています。しかし、その利便性の裏には、手数料負担や取引先との関係性への影響、不正業者とのトラブルといったリスクも伴います。そのため、ファクタリングを活用する際には、事前に財務コンサルタントに相談することが極めて重要です。
1. 適切な資金計画の立案
ファクタリングは迅速な資金調達が可能ですが、調達した資金をどのように運用するかが成功の鍵です。財務コンサルタントは、現金化後の資金運用計画を一緒に立案し、短期的な資金需要だけでなく、長期的な経営安定を実現するためのアドバイスを提供します。
2. コスト負担の最小化
ファクタリングには手数料が発生しますが、この費用はファクタリング会社によって異なります。財務コンサルタントは市場の知識や交渉力を活かして、手数料を最小限に抑えるための支援を行います。また、複数の業者を比較し、最適な選択肢を提案してくれるため、不適切な契約を結ぶリスクを軽減します。
3. 取引先との関係への配慮
特に3者間ファクタリングを利用する場合、取引先に売掛債権を売却したことが知られるため、誤解や信用低下につながる恐れがあります。財務コンサルタントは、事前に取引先とのコミュニケーション方法やリスク回避策についてアドバイスを行い、取引先との良好な関係を維持するサポートをします。
4. 不正業者からの保護
ファクタリング業界には未登録業者や不正業者も存在します。財務コンサルタントは信頼できる業者を選定するための助言を行い、不正業者とのトラブルを未然に防ぎます。
5. リスクとメリットのバランス調整
ファクタリングのメリットとデメリットを客観的に評価することで、企業にとって最適な資金調達手段であるかを判断するサポートを提供します。場合によっては、他の資金調達方法との併用を提案することもあります。
まとめ
ファクタリングは便利な資金調達手段ですが、リスクを伴う取引であるため、事前の準備と適切な判断が欠かせません。財務コンサルタントに相談することで、リスクを最小限に抑え、資金調達の成功確率を高めることができます。ファクタリングを検討している際には、ぜひ専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。